IDCでは、エンタープライズインフラ市場において、特定の計算処理を一般的なCPUからオフロードし高速に実行する処理を、アクセラレーテッドコンピューティングと定義している。具体的には、GPU(Graphics Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)をはじめとした、標準的なx86以外のプロセッサをCPUやアクセラレーターとして搭載したサーバーと、そのサーバーに接続される外付型ストレージを主な対象としている。
2022年の国内エンタープライズインフラ市場の約6分の1となる978億2,300万円へ
特定のワークロードの計算需要が、CPUの計算性能向上のペースに比べて急速に高まり、処理性能のギャップが顕在化したため、この解消のために採用が増えている。AIやIoT向けでは、一般的なCPUだけを計算に用いるサーバーと比べ、高密度な配置と高い電力性能を実現する可能性が高いことから、国内エンタープライズインフラ市場における重要な成長分野になると予測している。
国内エンタープライズインフラ市場に占める割合は、2017年の7.8%から2022年の16.8%へ大幅に拡大し、約6分の1を占めると予測している。配備モデル別に見ると、プライベートクラウドを含むクラウド向けの支出額のCAGRが16.5%、クラウド以外のCAGRが12.0%と予測している。AIやIoTなどの新しいワークロードは比較的多くクラウドに配備され、科学技術計算に代表される従来のワークロードはクラウド以外に配備される傾向があるとみている。
GPUやFPGAに加えて国内資本ベンダーによる新技術に基づく製品やサービスも投入
アクセラレーテッドコンピューティングでは、半導体設計プロセスの微細化だけに拠らない計算性能の向上を実現していくため、需要のある計算の種類や扱うデータが多様化することによって、新たな技術によるシェア獲得の機会が増えていく。
そのため、GPUやFPGAに加えて、国内資本のベンダーによる新たな技術に基づく製品やサービスも市場へ投入されている。そこで、普及を進めるにあたっては製品開発のみならず、対応ソフトウェアの開発に加え、導入や利用を支援するベンダー内外の体制構築が必要になるとみている。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ マーケットアナリストである加藤慎也氏は、「AI向けの計算需要の拡大に伴い、科学技術計算を中心に発展してきたアクセラレーテッドコンピューティングがエンタープライズインフラ市場の成長に貢献していく。アクセラレーターには大きな可能性がある一方、新技術の乱立により、採用する側の企業において自ら適切な技術を選択することが困難になる可能性がある。ベンダーは、提供するアクセラレーターの種類の多さや製品技術の優位性を訴求することはもちろんだが、あわせてユーザーが選びやすいソリューションとしての提供形態を整えるべきである。そのためにも、早期のエコシステムの構築が求められる」と説明している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内SoE/SoI向けエンタープライズインフラ市場 アクセラレーテッドコンピューティング予測、2018年~2022年」にその詳細が報告されている。レポートでは、SoE(Systems of Engagement)/SoI(Systems of Insight)向けのアクセラレーテッドコンピューティングにおける支出額の予測も行っている。