大多数の企業がBIツールを採用しているものの、企業内個人への浸透は道半ば
BIツールが市場に登場して20年以上が経過し、多くの企業が、BIツールの導入、および新バージョンや別製品への移行を経験するようになっている。ガートナーが、日本国内(主に首都圏、大阪圏、名古屋圏)で働くビジネス・ワーカーを対象に、2019年3月にWeb上で実施した調査の結果、対象者の74%が、自社でBIツールを利用していると回答した。
一方で、BIツールを導入している企業でも、企業内の個人(本調査の回答者自身)に着目すると、利用への積極性には差が見られました。自社でBIを利用しているという回答者のうち、最も多い割合の41%が自身では利用しておらず、主に自身の分析ニーズによって能動的に利用しているという回答者は35%だった(図1)。
週1回以上利用している回答者は全体の49%
さらに、自社でBIを利用しているという回答者に、「毎日」から「毎月利用するとは限らない」の6段階の選択肢を用意して利用頻度を尋ねたところ、すべての段階において選択率が10%以上となった。
前述の能動的に利用しているユーザーが、受動的に利用しているユーザーよりも利用頻度は高い傾向にあったが、能動的に利用しているユーザーの中にも、「毎月利用するとは限らない」という回答が10%以上あった。利用頻度の高い3つの選択肢をまとめて「週1回以上」、低い3つをまとめて「週1回未満」として結果を見ると、週1回以上利用している回答者は、全体の49%だった(図2)。
BIツールの機能とユーザーのデータ・リテラシーのマッチング状況にもばらつき
同調査において、利用中のBIツールに対する不満を最大3つまで選択可能とした設問では、「ツールの使い方が難しい、使いこなせない」という回答の割合が37%と最も多く、次に「パフォーマンスが低い、処理に時間がかかる」(27%)、「導入の有用性あるいは費用対効果を検証するのが困難」(22%)が続く結果となった。
最近では、グラフィカルなインタフェースを用い、直観的に利用可能であることを売りにしているツールも数多くあるが、そのようなツールであっても、一部のパワー・ユーザー以外にはハードルが高いという声を、ガートナーでは耳にしている。
今回の結果でも、そうした声がBIツールに対する不満として最も多かったことから、利用する上でハードルが高いと感じているユーザーが多数いるのは確かだ。一方で、「提供される機能が足りない」「提供されるグラフなどビジュアルの種類が足りない」と回答したユーザーもそれぞれ20%程度いた。
利用しているツールの種類やバージョン、ユーザーのデータ・リテラシーによっては、物足りなさを感じているケースも少なからずあり、現在ユーザーが利用しているBIツールの機能とユーザーのデータ・リテラシーのマッチング状況にもばらつきがあることが浮き彫りになった。
今回の調査結果について、マネージング バイス プレジデントの堀内秀明氏は次のように述べている。
「企業単位で見れば、BIツールはかなり浸透したと言えますが、企業内の個人に着目すると、BIツールの浸透はいまだ道半ばであると言えます。さらに、BIツールを利用している個人においても、利用頻度やデータ・リテラシーなどは、まちまちです。BI環境の改善を検討している場合、現在利用しているツールのタイプ、主なユーザーと不満の有無、ユーザーの積極性、ユーザーのデータ・リテラシー、BIサポートの状況などを個別に確認し、自社環境に最適な一手を見極める必要があることが、本調査の結果からも読み取れます」。
なお、ガートナーは6月10~12日、東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)において「ガートナー データ & アナリティクス サミット 2019」を開催する。サミットでは、「不確実な時代だからこそ、明確な目標を掲げてリードせよ」をテーマに、データとアナリティクスの活用レベルを引き上げ、不確実な環境の中でも目的を見失うことなく、デジタル経済における競争に勝利するための戦略や方式を提示するという。このリリースに関連した内容は、堀内氏が「BI環境の改善を、今どう進めればよいか」(12日11:15~12:00)で解説する。