インフォマティカは3月16日、最高データ責任者(CDO)の職務に関する初のグローバル調査「Chief Data Officers: The New Business Leaders(新しいビジネスリーダーとしての最高データ責任者(CDO)とは)」の結果を発表した。本調査では、CDOの課題や優先事項、重要業績指標(KPI)の他、デジタル経済における職務について質問しており、CDOが組織のパフォーマンスのためにデータインテリジェンスを模索する背景が明らかになったとしている。
本調査は、インフォマティカがIDCに委託。新型コロナウイルス感染症が蔓延し始めた2020年2月から4月にかけて、オーストラリア、フランス、ドイツ、インド、日本、英国、米国を含む10カ国でCDOの職務に就いている1,200人以上を対象に実施されている。
APJの調査結果:CDOの役割
これまでCDOは、コンプライアンスの順守やデータガバナンスの実行を中心とした職務に限られていたが、現在では職務の範囲が広がり、ビジネスの目標を達成するため、幅広いニーズにあったデータの提供が求められていることが明らかとなったという。
CDOの41%はビジネスリーダーの直属であり、最も多かったのは組織階層で「CEOの直下」という回答だった。CDOの65%のKPIが、運用効率、顧客満足度と顧客の成功、データプライバシーとデータ保護、イノベーションと収益、生産性と能力などのビジネス目標に関連している。またCDOの71%が、幅広い責務や他部署との多様なコラボレーションを必要とされているにもかかわらず、データスチュワード(データ管理/案内人)の数は4人以下と回答しているという。
CDOの優先課題
CDOとしての役割が拡大し、ビジネスリーダーとしての職務にシフトしていくにつれて、現在取り組んでいる優先事項と直面している課題にずれが生じていることが判明している。
CDOが最も重要視している優先事項としては、AI(27%)とデータ品質(22%)が挙げられた一方で、課題については下記の傾向がみられた。
APJのCDOから最も多く挙げられた課題は、下記のメタデータ(40%)に関するものだという。
- データの発見、ドメインの特定、分類
- ビジネス用語集と技術メタデータのマッピング
- データのリネージ、プロセスフロー、蔓延のマッピング
メタデータに次いで多く挙げられた課題は、クラウドに関連(25%)するものだとしている。
- クラウドデータウェアハウスおよびクラウドデータレイクの導入の一環としての、データインジェスチョン、データ品質、データガバナンス、データプライバシー
- アプリケーションのモダナイゼーション(SaaS)の一環としての、マスターデータのマッピング、変換、クレンジング
- マルチクラウド環境における稼働中のデータや保存データに対する適切なプライバシー保護
回答者の50%が、以下などの課題が原因で、データは業績を上げるために使用されていないと回答している。
- 重要なマスターデータ要素に共通のビジネス定義に関するコラボレーション
- データリテラシーとスキルのある労働力の不足
- コンプライアンスを維持しながらのセルフサービスによるデータアクセスの実現
APJでは「人」に関する課題も多く挙げられており、従業員のスキル向上やステークホルダーからの現実と乖離した期待、組織の優先事項との不一致など、ソフト面の課題も多く寄せられている。
その結果、APJの企業では利用可能なすべてのデータのうち、45%しか活用できていないこと判かったという。なお、グローバルで実施された同じ調査では、50%のデータが活用されているとの結果が出ており、APJと比較してやや高い水準となっている。
CDOに求められる4つの役割
本調査では、CDOの職務が1つだけでなく、4つの役割から構成されていることも明らかになったという。データの保護/データ使用、ビジネス機能/企業全体といった2つの軸に基づいて、組織がデータ主導型企業になるために必要なデータリーダーシップの類型をまとめている。
ガバナンス重視型
データを管理し、規制へのコンプライアンスを確保するためのフレームワーク、ポリシー、ルール、プロセス、および組織構造の構築に重点を置いている。データを発見、分類し、そのリネージと、ビジネスプロセスやシステムでどのように使用されているかを理解しようとしている。また、データの共通の定義やビジネス用語集を作成するなど、企業全体でデータリテラシーを向上させる方法も模索しているという。
運用性重視型
組織の運用をサポートするためのインフラストラクチャ、ツール、テクノロジー、プロセス、およびシステムの構築と展開に重点を置いている。データがすぐに利用可能で、運用効率とビジネスの生産性を推進するために使用できるようにすることを目指しているという。さらに、ビジネスプロセスとデータ管理アクティビティを自動化し、コストを削減する方法も模索している。
アナリティクス推進型
ビジネスパフォーマンスの監視と、ビジネスの成果の変化に役立つ洞察づくりに重点を置いている。レポート、予測、計画、分析の速度と精度を向上させて、パフォーマンスの透明性を高め、意思決定を加速して変化する条件に迅速に適応する方法を探しているという。また、機械学習と人工知能を使用して分析を自動化し、予測性を高める方法を求めているとしている。
デジタルイノベーター型
データとアナリティクスを使用してビジネス価値を生み出すことに重点を置いている。現在の顧客からより多くの収入を捻出し、新しい市場への参入や製品、サービス、ビジネスモデルを革新するといった、データを収益化する方法を探している。また、ビジネスプロセスのデジタル化・自動化により、摩擦のないエクスペリエンスを作成する方法も模索しているという。
本調査では、これらの類型は相互に排他的なものではなく、ビジネスの優先事項や需要の変化に合わせて、流動的にすべての要素に対応していることが判ったとしている。
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