LayerXは、クラウドサービス導入における障害要因を明らかにする「経理・財務部門におけるクラウドサービス利用の実態調査」の実施結果を公表した。本調査では、日本における経理・財務関連部門(有効回答数:1,062名)を対象としてオンライン上で行われた調査だという。
調査結果
コロナ蔓延を機にSaaS導入企業数が大幅に拡大
緊急事態宣言をはじめとした新型コロナウイルスの蔓延防止対策として、テレワークの促進が大幅に進展。本調査では、全体の49.6%がテレワークを導入しており、そのうち80%以上が“新型コロナウイルスの流行を機に導入した”ことがわかったという。また、テレワーク実施にあたり、回答者の66.8%が“新たなITツールを導入した/検討している”と回答。テレワークを実施すると回答した人のうち、SaaSを活用していると回答した人は70.4%に上り、テレワークとSaaS活用の密接な関係がうかがえるとしている。
業務効率化に残る多くの課題
SaaSは「テレワークの推進」以外にも様々な目的のために導入されており、経理部門では「人的ミスの削減」「紙媒体の削減」「人件費の削減」などが主たる目的となっているという。特に、業務を自動化することで人的ミスや人件費を削減できることに大きな期待を寄せていることがうかがえるとしている。
また、来年1月より施行される改正電子帳簿保存法に向けた、事前準備としての検討も進んでいる一方で、「UX、機能のわかりづらさ(46.6%)」「既存の業務フローとのアンマッチ(31.8%)」「手入力の多さ(26.1%)」「提供社によるサポートの不足(26.1%)」などが課題としてあげられたという。
最大の要因はUX、機能のわかりづらさ
課題感の中で最も多かったのが「サービスのUX、機能のわかりづらさ」で、46.1%ものSaaS導入者が挙げている。また、SaaS導入者の61.7%が「システムを活用した業務改善の相談先が社内にない・わからない」と回答。このことから、利用方法がわからず相談先もないため、せっかくのツールを活用しきれない状況に陥っていると考えられるという。
既存の業務フローとのアンマッチが導入効果を阻害
2番目に多かった課題として「既存の業務フローとのアンマッチ(38.1%)」が挙げられている。出社回数が減ったことにより物理的な作業が困難になった場合、その作業の多くを電子化することで解決できるように思われているという。
たとえば、受領する請求書の形式を紙からPDFにすることで、出社せずに請求書を受領し処理することが可能になる。事実、SanSanが本年実施した調査では、「請求書が原因で出社している人は83.7%で、テレワーク阻害要因」であるとされている。
一方で、SaaS導入者の46.1%は「導入によるテレワーク化の加速を感じていない」と回答。既存の業務にマッチしないサービスを導入しても、それらを調整するための新たな作業が発生する可能性があるという。SaaS導入を検討する際は、部分的な自動化(業務フロー内の置き換え)だけでなく、業務フローそのものを見直し、その他の既存ツールとの連携などを含めたITツール起点でのフロー構築も視野に入れるべきだとしている。
結論/提言:SaaS導入には業務フローの再構築とオンボーディング(導入・利用定着)支援の活用が必須
本調査の結果、SaaSを導入した経理・財務部門担当者の70.6%が不満や課題を抱えていることがわかったという。特に全体の46.1%が導入したSaaSの「サービスのUX、機能のわかりづらさ」に課題を感じており、サービスを有効活用できていないことが明らかになったとしている。
また、導入したサービスが既存の業務フローにマッチせず、期待される導入効果を発揮できていないことも明らかになったという。
SaaS導入時、業務フロー自体を再構築することを前提に、導入後の利用定着を見据えたプランの立案は欠かせないとしており、トライアル実施を含むオンボーディング支援機能を有し、SaaS導入者と伴走して新たな業務フロー構築に向き合うことができるサービス提供者であることが、選定時の考慮すべきポイントだとしている。
さらに、テレワークをSaaS導入目的の一つとする場合、ユーザーのフォローはより手厚くする必要があることにも留意し、定着までの道筋を立てる必要がある。「プロダクトに加え、導入に係るサポートまで含めてサービスである」ことを意識して、SaaS導入を検討すべきだという。
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