情報処理推進機構(以下、IPA)は、「DX白書2021」を発刊した。
「DX白書2021」の最大の特徴は、日米企業のDX動向について比較調査を行ったことだという。DXに関する戦略・人材・技術について、アンケート調査を行い、日本企業の現状や課題を考察。調査で明らかになった主なポイントは、以下の通り。
戦略面では、DXへの取組状況を尋ねた結果、日本企業は「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取組んでいる」の割合が合わせて45.3%であるのに対し、米国企業は71.6%だという(図1)。また、経営者・IT部門・業務部門が協調できているか尋ねた結果、日本企業は「十分にできている」「まあまあできている」が合わせて39.9%に対し、米国企業は8割以上と、2倍の差がついている(図2)。DXの推進にあたっては、経営者・IT部門・業務部門などの関係者が対話を通じて共通理解を形成し、ビジネス変革に向けたコンセプトを共有したうえで、推進施策に取組むことが重要だとしている。
人材面では、事業戦略上の変革を担う人材の「量」について、日本企業では「大幅に不足している」と「やや不足している」が合わせて76%に対し、米国企業は43.1%と不足感に開きがあったという(図3)。さらに、社員のITリテラシー向上に関する施策状況について、日本企業は「社内研修・教育プランを実施している」が22%に対して、米国では54.5%と大きな差が見受けられたとしている(図4)。企業は、まず社員のITリテラシーの現状を把握することで、適切な研修プログラムや施策を実施することが重要だという。
技術面では、日米におけるAI技術の活用状況について、日本企業では「導入している」が20.5%であり、米国企業(44.2%)との差は大きいものの(図5)、AI白書2020の調査(4.2%)と比較すると5倍に増加している状況も明らかになったとしている。また、DX推進に有効な開発手法の活用状況については、「デザイン思考」「アジャイル開発」「DevOps」を導入している日本企業はそれぞれ14.7%(米国は53.2%)、19.3%(米国は55%)、10.9%(米国は52.6%)と、米国の利用が上回っているという(図6)。顧客に新しい価値提供をするためには、適切な開発手法の活用が極めて重要。IT部門と業務部門が連携することによって「デザイン思考」などの利活用促進が望まれるとしている。
本白書では、アンケート調査のほか、ユーザー企業へのインタビュー調査による事例紹介や、有識者によるコラムなどを掲載。戦略面ではデジタル戦略の全体像と立案のポイントや成果評価やガバナンスのあり方について解説し、人材面ではデジタル時代のスキル変革について深掘りしているという。また、技術面ではITシステム開発手法や開発技術、データ利活用技術として、デザイン思考、アジャイル開発、クラウド、コンテナ、マイクロサービス/API、AI、IoT技術などの概要も含め包括的に説明。要点を20ページにまとめた「エグゼクティブサマリー」を同時公開されている。
IPAは、本白書を経営者・IT部門・業務部門のあらゆるビジネスパーソンが参照し、協調して組織的にDXに取り組んでいくことで、日本企業のDX推進が加速することを期待しているという。
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