ガートナージャパン(以下、Gartner)は、デジタル・テクノロジを活用したビジネス変革において、トータル・エクスペリエンスとコンポーサブル・ビジネスが不可欠との見解を発表した。
GartnerがグローバルのCEOおよび上級ビジネス幹部を対象に2020年7~12月に実施した2021年CEOサーベイでは、ビジネス上の最優先課題のトップに「成長」(56%)が、次に「テクノロジ関連の変更」(36%)が挙げられているという。同アナリストでシニア ディレクターの川辺謙介氏は、「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のパンデミックの影響もあり、現在のような不確実性の時代において、将来に向けて持続的な成長を目指す企業は、デジタル・テクノロジを活用して、予測不能の事態にも耐え得る能力を獲得する必要があります。CIOはそのような能力によってビジネス価値をどのように生み出せるのか、テクノロジを各業務にどのように適用すべきかといったことを再考する必要に迫られています。言い換えると、CIOにとって今は、ITによってどのようにビジネスを変革できるのかを根本から見直し、実行に移す重要な時期なのです」と述べている。
また、同社が2021年8月に国内企業に勤める従業員および経営者に対して実施した調査において、自社と他社の競合環境について尋ねたところ、過半数(53.0%)の回答者が5年前と比べて厳しくなっていると回答。一方で、優位になっていると回答した割合はわずか11.0%だったという(図1参照)。
前出の川辺氏は、次のようにコメントしている。「少なくともこの5年間に、日本企業の状況は全体的に厳しくなっていると考えられていることが明らかとなりました。しかし、同じ回答者に5年後までの見通しを質問したところ、『今よりは発展している』と『今と同じ程度を維持している』との回答が合計で70%を超えています。状況を改善する秘策に取り組んでいるからなのか、単に楽観的に見通しているだけなのか、その真意は定かではありませんが、少なくとも今までにない新たな戦略的・計画的な取り組みが必要とされていることは間違いないでしょう。」
一方、同調査でビジネスをさらに発展させるために重視すべきことについて尋ねたところ、上位3項目には「従業員の士気や満足度を高める」(41.8%)、「顧客満足度を高める」(33.5%)、「非効率な業務を廃止または改善する」(31.5%)が挙げられたという。回答者の多くは、従業員および顧客への対処と、非効率な業務を改善すべきであると考えていることが明らかになったとしている(図2参照)。
日本では少子高齢化が進む一方であり、人口増加を前提とした経済モデルはもはや成り立たなくなっているという。また、労働人口の減少にともない、生産性の低下が懸念されているとしている。
川辺謙介氏のコメント
日本国内における経済活動は、少子高齢化に対処すべく労働者当たりの生産性を向上させる必要がありますが、そのためにはまず課題となっている従業員、顧客、および非効率な業務への取り組みを見直すことが重要です。これを踏まえ、変化の激しい状況下で厳しい競争を勝ち抜くために、CIOやITリーダーには一層の期待が寄せられています。なぜなら、デジタル・テクノロジの普及や進展が目覚ましく、今後はこれを活用した形で『エクスペリエンス』のような目に見えにくいものを付加価値として捉え、変化に柔軟に対応できる『コンポーザブル』な形式でそれを実装・提供していく方向性になると考えられるからです。たとえば、改善すべき従業員や顧客への対処には、彼らを取り巻く『エクスペリエンス』が鍵を握るわけですが、中には非効率なユーザー・インタフェース(UI)が相当数見受けられます。また、モバイルをはじめ、普及する様々なデバイスの間では、提供すべきコンテンツやメッセージの一貫性を保つ必要があります。つまり、これらのエクスペリエンスのすべてをトータルで管理する『トータル・エクスペリエンス』が不可欠になっています。そのようにして生み出される付加価値は、ターゲットとなる顧客や関係者に適切なタイミングで効果的に提供されることが重要です。そのためにはアジリティを重視し、リアルタイムにスケールできるような考え方、アーキテクチャ、テクノロジを備えた『コンポーザブル・ビジネス』を推進する必要があります。
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