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コロナ禍の影響で普及は後ろ倒しに――国内の社会インフラIT市場調査

 矢野経済研究所は、国内の社会インフラIT市場を調査し、市場規模、分野別の動向、各種入札情報、将来展望、社会インフラ向けITソリューションビジネスの動向などを発表した。

社会インフラIT市場規模予測
社会インフラIT市場規模予測

市場概況

 本調査では、道路や鉄道、空港、港湾、河川、ダム、水関連、防災/警察の8分野の社会インフラITを対象として、調査を実施。2019年度までの微増推移から一転、2020年度の社会インフラIT市場規模(インフラ運営事業者の発注金額ベース)は前年度比2.9%減の5,948億円と6,000億円の大台を割ったとしている。2020年度は期初から新型コロナウイルス感染拡大の影響があり、延期・休止により、2017年度以来の前年度割れとなったという。

 分野別に見ると、特に空港、鉄道、道路での落ち込みが大きく、この3分野だけで140億円ほど減少。また、河川を除くすべての分野で市場は縮小しており、改めてコロナ禍の影響は大きかったとしている。2021年度においても、前年度以上にコロナ禍による社会インフラITへの投資抑制が続いており、前述した空港、鉄道、道路に加えて、水関連や防災/警察分野でも大幅な縮小が見込まれるという。そうしたことから、2021年度の社会インフラIT市場規模は前年度比10.2%減の5,340億円になる見込みだとしている。

注目トピック

社会インフラ向けITソリューション

 これまでは、ほぼ従来型の社会インフラITが実施されてきたという。しかし、2010年代に入ってからは、国土交通省を中心に社会インフラ保全でのIT活用を積極的に推奨する流れが生まれており、IoTやクラウド、5G/ローカル5G、LPWA、AI(画像解析、音声認識、データ解析など)、AR/VR&スマートデバイス、センサーネットワーク、ドローン、ロボットといったテクノロジーの実装が始まっている。

 これらのITテクノロジーを活用した社会インフラ向けITソリューションは2010年代後半から登場しており、2025年頃にかけて本格的な普及期を迎える見通しだという。なお、現状ではNEXCOグループ(東日本、中日本、西日本)や首都高速、阪神高速などの高速道路事業者、JRの旅客事業者(東日本・東海・西日本など)、東京メトロ、首都圏の私鉄大手などの鉄道大手事業者が中核事業者となっている。

 今後の普及に向けて期待が大きいのが、IoTやクラウドを活用したIoTモニタリング(次世代型の遠隔監視)。この仕組みは、既に河川監視やため池監視、ダム監視、下水道ポンプ(マンホールポンプ)の遠隔モニタリングなどで適用されており、さらにアンダーパス監視(豪雨時での危険個所監視)など防災用途でも徐々に広がっているという。

将来展望

 社会インフラIT市場は2025年度に向けて回復基調になるが、社会インフラ向けITソリューションは2025年頃にかけて本格的な普及期を迎える見通しだとしている。当面は、コロナ禍による経済や社会生活、医療基盤のダメージ回復に主眼が置かれるため、強靭化を目的としたインフラ管理投資自体は堅調であっても、社会インフラITへの投資については抑制気味にならざるを得ないという。

 エリア別に見ると、首都圏・関東エリアなどでは東京オリンピック・パラリンピック関連でのインフラ投資(高速道路や幹線道路、鉄道、空港など)に一服感がある一方で、2025年の大阪万博が控える近畿エリア、リニア新幹線特需のJR東海案件がある中部エリアなど、より西に向かってインフラ投資の盛り上がりが期待される感があるとしている。

 個々の分野については、コロナ禍でIT投資が落ち込んだ鉄道や空港、道路のほか、改正水道法が成立して3年ほど経ち民営化/民間活用に踏み出す自治体が出てきた水関連分野などでは、インフラ老朽化への対応およびコスト削減への意向が根強い。2023年度頃からは社会インフラITへの投資は拡大基調が加速するという。

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