9月26日、金融データ活用推進協会は初のMeetupイベントを開催。デジタル庁後援の下、同協会の活動報告や勉強会、懇親会が行われた。
冒頭、日本銀行 金融研究所長の副島豊氏が「金融業界は早くからデータを活用してきていますが、近年『データの利用可能性』『ビジネス活用するためのシステム実装』『経営レベルで活用する』という3つの視点で変化が見られます。これらを支える人材育成は大変であり、各社で閉じずに協会で行うことには意義がある。データによってビジネスチャンスを生み出していくことは面白いことであり、そのドライビングフォースとしてデータ活用が発展していけばよいと思っております」と開会の挨拶をすると、金融データ活用推進協会の代表理事を務める岡田拓郎氏が運営状況を説明した。
金融データ活用推進協会が発足から3ヵ月を迎える中、金融機関を中心に67社が入会しており「金融AIの教科書」の制作、「データコンペティション」によるデジタル人材育成の取り組み、「組織の標準化」を3本柱として活動を推進していくという。なお、それぞれ同協会の企画出版委員会、データコンペ委員会、標準化委員会が主として担うとしている。
理事を務める河合祐子氏は、「金融データ活用チャレンジ」というデータコンペティションを開催するとして「金融業界横断ということがポイントです。遅れていると言われがちなデータ分析の分野についてスピードアップをしていきたく、ビジネス部門とテクニカル部門に加えて、初学者に参加してもらえるようチュートリアルをつけて実施することが大きな特徴です」と述べる。
特にデータ分析者向けの部門では学生にも参加を呼びかけていき、Databricksの協力により分析環境も提供するという。理事の井口亮氏は、「学生を含めて、金融データが身近なところで社会課題の解決につながることを実感できるようなものにしていきたく、ぜひ周囲の方と一緒に参加いただきたい」と呼びかけた。
また、データ活用の推進に同コンペティンションの開催がもたらす影響について、SIGNATE 代表取締役社長を務める齊藤秀氏が解説。企業側には、高性能なAIや優れた分析結果が得られ、人材発掘や採用にもつながるといったメリットがあるという。一方、参加者には、賞金はもちろん仲間づくりや能力の証明、上位者から学びを得られることもメリットとしている。齊藤氏は、「金融業界を横断する初めてのコンペティションにプラットフォーマーとして参画することで、データ活用の知見をシェアし、業界を盛り上げることができることを嬉しく思います」と述べた。
続いて、金融庁データ分析統括室長 チーフ・データ・オフィサーの村木圭氏、金融庁イノベーション推進室長 牛田遼介氏が特別講演を行った。村木氏は「金融庁のデータ活用高度化の取組みの紹介」と題して、これまで同庁が行っていた検査・監督のやり方が5年程前から変化しており、データ分析の重要性が増していると説明。「きちんとデータを活用し、モニタリングを通じて政策立案や監督の基盤となるような個別金融機関の経営状況、金融システムの脆弱性を把握することが我々に与えられている役割だと思っています。そのためにデータ分析力向上とデータ戦略という2本の柱を推進していきます」と語る。
また、データ分析のすそ野を広げなければいけないという問題意識もあり、2年前から職員が自主的に政策立案やモニタリングのためのデータ分析に取り組んでおり、そうした動きを支援することも推進しているという。なお、共同データプラットフォームに関する実証実験も始めており、金融機関とのコミュニケーションが必要であり、ぜひ協力・支援してほしいとした。
次に牛田氏は、2022年7月にFinTech室からイノベーション推進室に変わったことに触れて、支援強化に言及。特に、FinTech企業や金融機関など実証実験を行う事業者に向けた「FinTech実証実験ハブ」の取り組みについては、AIを用いた金融機関のコンプライアンス業務の効率化に関する実証実験などを実施しているとして「前向きに活用を検討してほしい」と呼びかけた。