12月1日、アドビは記者発表会を開催した。
はじめに、2022年の取り組みについて同代表取締役社長 神谷知信氏が「アドビが設立40周年を迎え、日本法人も2022年3月に設立30周年を迎えることができた」と同社の取り組みを振り返る。アドビにはデジタルマーケティングという分野を作ってきたという自負があり、製品の提供形態をサブスクリプションに切り替えたことは大きな転換点になったとした。また、同社が目指す『Creativity for All』に向けては、電子サインソリューションや『Adobe Express』なども柱になっていくという。
同社の業績については、サブスクリプションの割合が純増していることに触れて、「投資家にとって予測しやすい事業モデルであり、高評価をいただいている」と述べる。また、米国のサイバーマンデーにおけるオンライン消費額が過去最高を更新したという調査結果を挙げて、Eコマースの盛り上がりに言及。コンテンツやアプリが爆発的に増加しているように、企業がエンドユーザーに対してリーチする上でも良質なコンテンツ作りが欠かせなくなっているとして、アドビ製品のダウンロード数も増加しているという。特に、日本では動画制作に関する需要が高いとした。神谷氏は、「今後AIや機械学習の発展につれて“人間のバリュー”が問われるようになっていき、そのベースとして『想像力』が重要になっていくと考えている。当社としても製品を含めてサポートを強化していきたい」とする。
なお、アドビの日本法人では『心、おどる、デジタル』というビジョンが掲げられており、“わくわくする世界”を実現したいとして『Creative Cloud』『Document Cloud』『Experience Cloud』3つのクラウド事業を柱に推進。サブスクリプションモデルへの転換による細かな製品アップデートによる品質向上、Web提供によりデバイス依存減少につながる『Adobe Express』、各製品を支えているAI『Adobe Sensei』、Figma買収によるコラボレーション拡大という4つの戦略領域に注力することで日本のクリエイターが世界に羽ばたいていけるよう支えるとした。
さらに、コロナ禍でPDF利用が伸長しているとして、企業における電子サインの利用拡大、押印廃止など早稲田大学との電子化促進にともなう連携、凸版印刷とのマイナンバーカードを用いた本人確認サービスなどの取り組みにも言及。オムニチャネル化の加速やDX(デジタル化)の支援などにおいて、国内外のユーザーが連携できるようアドビが間にはいりコミュニティ活性化を担っていくという。
「アドビはコミュニティに支えられている会社でもあり、さまざまなユーザーの悩みを解消できるよう中心となって取り組んでいきたい。特に日本国内においては『相談できるアドビ』となれるようリソースを増やして支援していく。また、多くの調査結果から日本のDXが遅れており、いかにデジタルエコノミーを安全性を担保しながら広げていけるか、課題解消に向けて『アドビ未来デジタルラボ』を発足させる」(神谷氏)
『アドビ未来デジタルラボ』については、外部有識者を交えて社会課題解決に向けて討論、提言していく場だとして、同常務執行役員 兼 CMO 里村明洋氏は「テクノロジー、コンテンツ、ライフスタイルという3つの領域から着手する予定」だと説明。テクノロジー面では、コンテンツ制作や配信に最新テクノロジーがどのようなインパクトを与えるのか、Cookieレスへどう対応するのか、言語や文化の壁がどう変化していくのか。コンテンツ面では、3DやジェネレーティブAI、コンテンツ立国を目指す日本の発信方法、地方活性化などの課題について。ライフスタイル面では、場所や時間の使い方、子供たちの未来の変化、デジタルコンテンツの求められる形などについて討論、提言していくとした。なお、同組織は12月1日から発足しており、具体的な活動は2023年を予定しているという。
続けて、実際にメタバースと3Dテクノロジーがどう生活を変えるのかとして、同社3Dアーティスト&ソリューションコンサルタント 福井直人氏が『Adobe Substance 3D Modeler VR』を用いてバーチャルフォトを作成するデモを実演。
製品内のパラメータを変化させることで形状を整えていき、VRゴーグルをかけて細部を仕上げながら、福井氏は「粘土をこねるような感じでモデリングの知識がなくても作ることができる」と述べた。
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