2024年3月12日、LINE WORKSは事業戦略説明会を開催した。
同社は2024年1月5日にワークスモバイルジャパンから社名変更を行っており、資本の78%をNAVER Cloud、22%をLINEヤフーが有している状況にある。法人向けグループウェア「LINE WORKS」を主力サービスとしており、LINE WORKS 代表取締役社長 増田隆一氏は「ノンデスクワーカーの非定型業務を念頭に置いたモバイル提供を最優先にしてきた。ビジネスチャットツールと比較されることも多いが、我々はUI/UXの会社だと認識している」と優位性を強調した。
2023年2月にLINEのAI事業「LINE CLOVA」を事業継承しており、同年4月にAI事業の組織統合後、5月には親会社だったワークスモバイルがNAVER Cloudに組織統合されている。
2024年1月時点で導入社数は46万社超、500万人以上の利用ユーザーを抱えている。2019年からのコロナ禍を経て事業が伸長する中、「ユーザー数が増えるにつれて社外との外部接続数が130万人を突破しており、BtoCサービス提供者における顧客のLINEとの接続数も2700万人を超えている」と増田氏。営業支援ツールや出退勤管理アプリケーションなど、外部ソリューションとの連携数も170に上るという。
なお、コーポレートブランドとプロダクトブランドともに「LINE WORKS」として事業展開を行ってきたが、2024年5月よりプロダクトブランドには下図「W」アイコンを付けることを公表。3色で構成されており、ロゴ左から「CONNECT」「TRUST」「BOOST」を象徴しており、従来のLINE WORKSとAI事業を“信頼(TRUST)”で懸け橋になるという意図があるとする。
AI製品としては「LINE WORKS AiCall」「LINE WORKS OCR」「LINE WORKS Vision」の3つに注力しており、LINE WORKS AiCallはAIによる電話応対、LINE WORKS OCRはAI-OCR(文字認識)、LINE WORKS Visionは防犯カメラの機能を担っているという。既にヤマト運輸は集荷受付においてLINE WORKS AiCall、弥生ではスマート証憑管理においてLINE WORKS OCR活用している。LINE WORKS 事業企画本部本部長 大竹哲史氏は「複数サービスの提供にあわせた基盤の見直し、個別プロダクトの強化に取り組みながら“AIの社会実装”を進めていく」と説明。LINE WORKSのコンポーネント化を進めており、Drive機能やビデオ会議機能の切り出し、生成AIを用いた連携機能群「CoWORKS」などを予定しているという。
これにともない複数アプリケーションを跨ぐ、統合ログイン管理機能を提供することで利便性を損なわないとしている。コミュニケーション領域から順次AIを搭載していき、文字入力が難しい現場業務に向けた音声によるチャットとの連携機能、ユーザーが自社向けのLLMアプリケーションをノーコード開発してLINE WORKSに展開するような機能実装も検討しているという。「デスクワークにおける定型業務とノンデスクワークの非定型業務を行き来しながら業務にあたるユーザーが多い中、パートナーとの協業領域も拡大していく」と大竹氏は述べる。なお、昨年発表された「AI秘書」についても社内検証を進めているとして「AIにかかわる政府方針が2024年3月に正式決定される見込みとの報道もある中、信頼性を担保するために確認の上でリリースをしたい」と増田氏は説明。親会社が提供する「HyperCLOVA X」を利用する際には韓国にあるインスタンスを利用しなければならないこと、加えて政府方針と照らしあわせたときに利用が難しくなることも考えられるとして、ChatGPTやGeminiなど複数のLLMをCoWORKSで用いるとした。
既にLINE WORKSではSOC2/SOC3、ISO/IEC 27001, 27017, 27018, 27701認証などを取得している中、法人向けサービスとして国内のデータセンターでの運用・DR計画はもちろん、開発・運営委託先であるNAVER Cloudに対しては日本からガバナンス統治をしているという。具体的には、LINE WORKSサービスの開発・運用を委託しており、NAVER Vietnamが一部サービス(Driveエクスプローラー、PC版LINE WORKS)の開発を受けている状況であり、各種承認や定期的な監査、ソースコードの診断などを日本側で担保しているとのことだ。
2024年中にはAPEC CBPR(越境プライバシールール)の取得を予定しているとして、LINE WORKS CISO兼CPO サービスオペレーション本部 本部長 松本達也氏は「クラウドサービスの事業者として適切にデータ管理、個人情報への対応を行っている」と説明。2024年4月には、LINE WORKSサービスにおける責任共有モデル、開発・運用ライフサイクルでのセキュリティ活動などについて100ページほどで説明する『セキュリティホワイトペーパー』を刊行することで透明性を担保し、エンドユーザーにおけるセキュリティニーズに応えていくという。増田氏は「信用や信頼を犠牲にしてはならず、こうした取り組みを通じて『心理的安全性』を醸成するブランドになりたい」と強調した。