EYは、2024年第1四半期(以下、1Q)のIPOに関する調査結果を発表した。
2024年1Qは、世界のIPO市場において、287件のディールにより総額237億米ドルが調達された。これは前年比で件数では7%の減少、調達額では7%の増加を示している。また、主要なIPO市場のほとんどで、現在の株価が公開価格を上回るIPOが数多く実現した。この現象は、発行会社と投資家との間の信頼感が高まったことにより、バリュエーションと価格水準が向上したことを示唆している可能性があるという。
AmericasとEMEIAでIPO活動が回復する中、Asia-Pacificでの活動が急激に鈍化
世界のIPO市場は、目下進行中のマクロ経済および地政学的ダイナミズムの影響を受けて、地理的にランキング上位国が大きく入れ替わっている。
Americasでは、2023年4Qおよび2023年1Qと比べても、引き続きIPO活動が盛んであり、前年比では件数が21%増の52件、調達額は178%増の84億米ドルに及んだ。5億米ドル以上を調達したのは、2023年1Qでは1件のみであったのに対し、2024年1Qでは上位7件のIPOの全てがこれを実現。米国は、過去20年で最低の調達額を記録した2022年を経て、昨年来の市場上昇の波に乗り、ついに今年1Qに目立った回復を遂げたという。
Asia-PacificにおけるIPO活動は、地域全体のセンチメントの弱さを反映し、1Qは前年比で34%減の119件、調達額は56%減の58億米ドルという結果となった。この落ち込みは、特に中国本土と香港において顕著で、IPO件数は半減以上、ディール規模はほぼ3分の2に減少。これら2つの市場では、過去数年にわたってIPO活動が継続的に減少傾向にあるという。香港では、今年に入ってから10件のIPOが実施されたのみで、その中でも2件が1億米ドル超を調達し、調達総額は2010年以来最低の水準となっている。日本では、1QにAsia-Pacific地域で唯一IPO件数がわずかに増加し、2月には日経平均が歴史的最高値を更新した。
EMEIAのIPO市場は、年初来より成長を遂げ、1Qには前年比で40%増の116件のIPOにより58%増の95億米ドルが調達されている。このように急増したのは、欧州とインドにおけるIPOの平均ディール規模が大きかったためで、EMEIAは2023年4Qから調達額で世界のIPOのマーケットシェア第1位を維持しているとのことだ。2019年以降、インドは特にIPOの件数で急速に注目を集め、現在では傑出したパフォーマーとして台頭しているという。
2024年2Qの展望:不確実性が高まる中、一瞬のチャンスを最大限に活用
2024年のIPO市場はこれまでのところ、IPO活動が活発化するなど、活気が戻る兆しを示している。過去数年間、市場全体の活動は抑制されていたが、発行会社と投資家の双方の熱意が高まっており、市場のダイナミクスが変化し、上場がより歓迎される環境になっていることが示唆されているという。
投資家とIPO候補企業は、金利の上昇と流動性の低下という新たな常識に適応しながら、その一方で、IPO市場における地政学的情勢および各国の選挙の動向から生まれるさらなる複雑性をうまく乗り越える必要があると同社は述べている。今年行われる選挙が不確実性を深めているため、IPO候補企業は、選挙結果を注意深く観察し、特定の政策がステークホルダーの利益にどのような影響を及ぼすのかを見極め、必要であれば、IPO戦略およびその実行の時期を再検討する必要があるとのことだ。
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