本セミナーでは、国際会計基準への適用支援をいち早く展開しているビジネスブレイン太田昭和と、経営管理情報分析のITツールを開発しているウイングアークテクノロジーの共催の下、IFRSが企業の販売管理・会計システムに与える影響、及び非上場企業も含めて各社におけるIFRS適用上の影響範囲、そして日本独自に存在する税務会計に及ぼす影響等々についての最新の発表が行われた。
基調講演には、ビジネスブレイン太田昭和 会計システム研究所 所長の中澤進氏が登壇。IFRSが企業経営に与える影響について講演が行われた。中澤氏は、国際会計基準の変遷について、これまでの経緯を一通り概説した後、経営に与える影響として、「連結ガバナンス」「利益ではなく資産効率に重きを置いた経営」「基準・ルールに基づく企業活動」などを挙げたうえで、「経営スタイル改革のきっかけとしてほしい」と述べた。また、IFRS導入そのものについては、「基準はこれからもどんどん変わるもの。本質論を理解しておくことが重要」とした。さらにEUを参考にするという意見については、「全くの間違い」とし、EUと日本の主な相違点を挙げたうえで、「日本企業としてのアプローチ方法の検討が必要」と指摘した。
引き続き、ビジネスブレイン太田昭和のパートナーで公認会計士の永井寛章氏による講義「IFRSの導入が販売管理・会計システムに与える影響」が行われた。永井氏もまたIFRSと日本基準との相違点について指摘「財務諸表の表示、収益の計上、償却計算、開発費の資産計上等、数多くの会計基準に相違が生じている」としたうえで、「IFRSは決算手続き上の業務見直しだけでは対応しきれない」とし、対応のポイントとして自社の現状を整備し、想定される2015年に向けて、どの程度の業務運用、システム整備が必要となるのか、「規模感」を早期に把握し着手時期を想定しておくことの必要性を訴えた。
最後に行われた講義では、「IFRSの影響判定ポイントと利活用のポイント」と題して、フューチャーアーキテクト株式会社 ビジネス統括本部で税理士の高橋正晴氏が登壇。中堅・中小企業のIFRS利活用についての解説が行われた。高橋氏は、「多くの中堅・中小企業において、IFRSの導入はメリットが少なく、デメリットが多い」と指摘。その上で、IFRSを利活用するための方策として、「制度面ではコストを意識し最低限の対応に抑えること」「経営面では積極的に仕組みを採り入れて、管理コストの増大を収益の拡大の機会に変えること」を挙げた。また、IFRS導入により、一般的なシステム機能の向上が図られることから、経営に役立つデータをリーズナブルに取得できる環境が整うことも指摘。さらに、「現状では連結のみの対応となるが、個別の適用になった場合は、制度が大きく変わる可能性がある」とし、動向を注視しておくことが必要と強調し、セッションを終えた。