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島津製作所が直面した「Domo」による全社データ活用の壁──Domo創業者が示す、育成を軸とした戦略

 2024年10月9日、ドーモ(Domo)は、年次イベント「Domopalooza Japan 2024」開催にともなう事業戦略説明会を開催した。

 説明会の冒頭、Domo 創業者兼CEOのジャシュ・ジェイムズ(Josh James)氏が登壇すると、「日本市場のビジネスは拡大しており、他社と比較しても市場としての重要性は高く、引き続きフォーカスしていく」と述べる。

Domo 創業者兼CEO ジャシュ・ジェイムズ(Josh James)氏
Domo 創業者兼CEO ジャシュ・ジェイムズ(Josh James)氏

 グローバルの事業戦略の柱として、“プロダクト主導の成長”を据えており、ユーザー自身がセルフサービス形式で自立していくことを目指す。そのためにユーザーアカウント単位での課金ではなく、使用量単位で課金する料金体系を敷いているという。データ容量やETLの頻度などを基にクレジット消費ベースでの請求(コンサンプション・プライシング)となり、日本でも切り替えが行われたが、4ヵ月程度で128%のユーザー増加が見られたとする。

 また、同社のエコシステムにおいて、DatabricksやSnowflake、Oracleのような「CDW(Cloud Data Warehouse)」ベンダーの存在感が増しており、各社とのパートナーシップも拡充。日本においても各種クラウド基盤との連携は進んでおり、複製なしにデータの取得・ETL・可視化といった一連のフローをDomo上で完結できるとした。

 加えて、AIが台頭している中でデータの重要性は増しており、「自社データの活用におけるパイオニアだと自負しており、実際にAIを組み合わせて利用しているユーザーも多数いる」と強調する。

 日本市場においては、DXに向けてデータ活用の成熟度が増している組織が増えているとして、ドーモ プレジデント ジャパンカントリーマネージャーの川崎友和氏は「以前は、営業や人事など、特定領域に閉じていたが、ここ2、3年で『全社データ利活用』がトレンドになっている」と話す。その一方、『DX白書2023』(情報処理推進機構:IPA)のデータを引き合いに出し、DXを推進する人材が依然として充足していないという調査結果も見受けられるとして、日本でも「点在したデータの管理」「利用ユーザー数の拡張」「データ人材不足」「定着までのプロセス」といった課題にフォーカスを当てながら、データの全社活用までを支援していくとする。

ドーモ株式会社 プレジデント ジャパンカントリーマネージャー 川崎友和氏
ドーモ株式会社 プレジデント ジャパンカントリーマネージャー 川崎友和氏

 たとえば、下図にある「Domo.AI」によって、ITスキルが未熟な従業員を支援することも容易だとして、Domoから取得できるデータを参照し、必要なダッシュボードを自然言語で問いかけるだけで作成できるという。

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 加えて、データアンバサダーという役職が求められている中、日本でも教育プログラムを提供。包括的なデータ活用人材(DX人材)を育成する「データアンバサダー養成講座」を提供するとした。

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 続いて、実際に「Domo」を導入して全社データ活用を進めている、島津製作所 DX・IT戦略統括部 DX戦略ユニット 山川大幾氏が登壇。同社では、2019年にDomoを導入しており、約5年が経過する中でユーザー数は増加している。その過程において、「2022年10月、ダッシュボードが成果につながっているのか、という危機感から壁にぶつかった」と明かすと、DX戦略におけるデータ活用人材の育成において、各種ガイドラインや成功事例を参照しても正解がわからず、試行錯誤していた状況だったと振り返る。

株式会社島津製作所 DX・IT戦略統括部 DX戦略ユニット 山川大幾氏
株式会社島津製作所 DX・IT戦略統括部 DX戦略ユニット 山川大幾氏

 あるとき、SCM担当者と会話した際、海外販社の需要変化にともなう生産計画の変更において、勘に基づいた判断などに頼っていた部分が多くあることを認識。そこで、「誰が見るのか、打ち手は何か」などを徹底して考えた、同担当者によるダッシュボードが使われはじめると効果を現し、周辺部署での利用が活発化したという。こうした役割を“ビジネスアナリスト(BA)”と定義した上で、Domo Dive Program(DDP)という社内プログラムを整備し、2025年度末までにBAを100人規模にすることを目指して活動していると山川氏。ドーモの協力を得ながら、現在も座学による研修プログラムを実施したり、研修後に業務課題を解くような実践形式のワークを行ったりと、「即座にアウトプットすることで、定着を図っている。BA研修自体もPDCAサイクルに基づき、日々改善している」と説明する。現在、BA研修は3期目を迎えており、会議においてもデータに基づいた資料で適切に議論できるようになるなど、変化が見られるとのことだ。

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 島津製作所の活動を支援している、ドーモ コンサルタント/コアビズボード 代表取締役 八木幹雄氏は「ツールが増えてデータ活用に取り組みやすくなっている一方、自社に適用し、社内展開するための情報が不足してる現況がある」として、課題解決にはデータアンバサダーのような役割が必要だとあらためて指摘する。

ドーモ株式会社 コンサルタント/株式会社コアビズボード 代表取締役 八木幹雄氏
ドーモ株式会社 コンサルタント/株式会社コアビズボード 代表取締役 八木幹雄氏

 島津製作所がSCM担当者をみてBA研修をプログラム化したように、山川氏のように社内展開を牽引するデータアンバサダーの存在は欠かせないとして、先述した「データアンバサダー養成講座」にてベストプラクティスを体系化したと話す。また、島津製作所に提供しているプログラムと同等のビジネスアナリストを養成するための講座も提供開始。『ダッシュボードづくりの教科書』(翔泳社)として、関連書籍も刊行している。「ドーモでは、データ活用人材を役職として定義しており、ダッシュボードをどう作るのかといった基礎研修だけでなく、拡張研修として社内展開・人材育成のノウハウも提供している」と強調した。

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この記事の著者

岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)

1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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