AMDが、12月11日に「AMD Advancing AI & HPC 2024 Japan」を開催。同者幹部によりデータセンターからCPU、GPUなどの技術戦略、急成長するデータセンター事業とAI技術の融合による展開が発表された。
日本AMD代表取締役社長のジョン・ロボトム氏は、同社の直近の第3四半期の決算を報告した。売上高は68億ドルで、同期比18%増加した。この成長を支えるたのはメインにデータセンター事業とクライアント事業で、データセンター事業は、Instinct GPUの出荷数増加と第4世代EPYC CPUの売上成長により、前年比122%増加。クライアント事業はRyzenプロセッサシリーズの売上により、前年比29%の成長を記録した。特にGPUやAI関連製品の需要が顕著な伸びを示しているという。
AMD テクノロジー&エンジニアリング部門のサミュエル・ナフシガー氏は、同社の技術が様々な分野で革新を生み出している事例を紹介。CERNの大型ハドロン衝突型加速器では、毎秒500テラバイトという膨大なデータを4マイクロ秒でAI推論処理し、必要なデータのみを抽出する革新的な成果を上げている。また、スバルの自動運転技術「アイサイト」では、第2世代Versal設計シリーズにより従来比3倍の演算性能を実現したという。
ナフシガー氏は講演の締めくくりで、「AI技術は社会全体へ多大な恩恵をもたらす一方、それには膨大な計算能力とエネルギー資源が必要です」と指摘。AMDは3Dスタッキング技術の活用や、MI300Xプロセッサによる2020年比28倍の効率改善など、持続可能なAI・HPC基盤の構築に向けた取り組みを進めている。
理化学研究所 計算科学研究センター長の松岡聡氏は、スーパーコンピュータ「富岳」とAIの融合による科学技術イノベーションについて講演。富岳は現在、線状降水帯予測や大阪万博アプリ開発、クリーンエネルギーシステム研究に活用されており、さらに科学技術特化型の大規模言語モデル「Fugaku-LLM」の開発も進められているという。松岡氏は、消費者向けLLMが直面するデータ不足に対し、科学分野には豊富な未活用データが存在することを指摘。今後シミュレーションとAIの融合に向けた研究をさらに進め、次世代計算基盤としての「富岳NEXT」を構築していくと語った。
沖縄科学技術大学院大学の北野宏明教授は、AIによる科学的発見の可能性についての展望を示した。「現在のAI革命はまだ初期の蒸気機関の段階、真の変革は科学的発見の領域で起こる」という。特に医学・生物学分野では年間300万本もの論文が発表され、人間による全ての精読は不可能な状況にある。この認知限界を超えるため、北野教授らは仮説生成から検証までを自動化する「科学的発見エンジン」に注目すべきという。2050年までにノーベル賞級の科学的発見をAIが自律的に行うことを目標に、国際的な研究プロジェクトが進められており、既にタンパク質構造予測などの分野で画期的な成果を上げているという。