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Oktaの新たなベンチャー投資:グローバルコンプライアンスを提供する「k-ID」CEOが来日

 アイデンティティ管理のOktaの投資会社Okta Venturesがベンチャー投資を加速している。ゲームやSNSに対する世界的な規制やルールの強化が高まる中で、コンプライアンスプラットフォームを提供するk-IDのシリーズAに出資を行った。

 k-IDはゲーム業界向けのサービスを展開している企業で、ゲームをプレイする子供の年齢確認や親の承認を可能にする機能を提供するベンチャーだ。

 オンラインゲームの市場が世界的に拡大している中、児童向けのゲームやオンラインサービスを提供する企業や開発者側も子供達に安全な環境を提供するため、様々なルールやコンプライアンスに適応する必要がある。しかしそうしたルールは各国や地域ごとに複雑化しているため、対応はコストや人員リソースの面で難しくなる。

 「k-ID」が提供するサービスでは、ゲーム提供者側は1つのSDKで各国のプライバシーや安全規制に準拠することを可能にし、子供を中心にしたゲームやオンラインサービスの体験やプライバシーの安全性を確保するというサービスだ。各国規制が異なる中、同意の取り方、データ転送ルール、承認プロセスなどの様々な課題への対応が可能となる。

 2025年1月、Oktaが主催するゲームベンダー向けのセミナーに合わせて来日したk-IDでCEOを務めるKieran Donovan氏にインタビューを行い事業の理念やサービス内容を聞いた。

──k-IDは主にゲーム業界向けにサービスを展開されていますが、その背景についてお聞かせください。

k-ID の創設者兼 CEO Kieran Donovan氏
k-ID の創設者兼 CEO Kieran Donovan氏

Donovan氏:私たちがゲームから事業を始めた理由は、若者、特に児童やティーンエイジャー向けのゲームには複雑なコンプライアンス要件があるからです。アカウント関連やソーシャル機能の獲得方法、いわゆる「ガチャ」と呼ばれる課金システムの扱いなど、様々な規制があります。そこに最大の価値を提供できると考えました。現在は、ゲームコミュニティなどで人気サービスとなっているDiscordなどの大手ソーシャルプラットフォームとも関係を築いており、より幅広い業種への展開を目指しています。

──複雑なコンプライアンスとは具体的にどのようなものですか?

Donovan氏:最近の子供を対象にしたゲームオンラインサービスでは、最初に年齢確認が必要とされます。これは単なるチャット機能の要件だけでなく、データの取り扱いや課金システムの利用可否など、様々な判断の基準となるからです。しかし、その基準は国や地域によって大きく異なります。

 年齢確認については、ここ数年で、多くの国が年齢確認や保護者の同意に関する新ルールを導入しています。実際、過去6ヵ月間に30以上の国で、新たに「保護者の同意」が、子供が各種機能にアクセスする前提条件として求められるようになりました。

 また、米国ではオンラインサービス事業者は13歳未満の利用者の年齢を確認する義務がある児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)などの、「デジタル同意年齢」というものがあります。メタやX(旧Twitter)、TikTokなど大手SNSも対象とされています。米国の場合は13歳であり、世界各国で新たな年齢基準が導入されつつあります。また、シンガポールでは、Google、Apple、その他多数のプラットフォームにおいて、全アプリに対し年齢確認が義務付けられ、これが3ヵ月後に施行される予定です。

 つまり、これらのプラットフォーム上で提供されるゲームにおいては、ユーザーの年齢情報が提供されることになり、その情報に基づいて対応することが求められます。また、インドでは初めて、18歳未満(つまり17歳以下)の子供がオンラインサービスにアクセスする際に、保護者からの同意を必須とする規定が導入されるといった状況です。

──貴社のサービスでそうした規制への対応はどのように行っているのでしょうか?

Donovan氏:私たちは、顔画像による年齢推定システムを提供しています。これは重要なポイントですが、「顔認証」ではなく「年齢推定」です。デバイスのカメラを使用して年齢を推定しますが、その情報はデバイス内で完結し、サーバーにはアップロードされません。これにより個人情報を保護しながら、年齢確認が可能となります。

 この技術は2014年にヨーロッパの大学研究チームから取得し、規制環境の変化への対応力を重視して発展させてきました。

 具体的には3つの強みがあります。1つ目は顔推定のアルゴリズムのAI、2つ目は世界各国の複雑なコンプライアンスやルールを学習した「グローバルコンプライアンスデータベース」です。そして3つ目は当社のほとんどのスタッフがエンジニアでありながら弁護士でもあることです。また、各国の政府機関や、アメリカ、カナダのゲームの規制を行うESRBのような格付け機関とも緊密な関係を築いています。

 特にアジア地域では、日本、韓国、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、インドなどと連携し、最新の規制動向を常に把握しています。これにより、クライアントが新しい市場に参入する際のコンプライアンス違反リスクを最小限に抑えることができます。

──オンラインゲームやサービスの年齢推定がビジネスになると考えたのは何故でしょうか?

Donovan氏:ゲームのコンプライアンス対応にビジネスチャンスがあると考えたきっかけは、Epic GamesがFortniteで若年層への対応が不十分として5億2000万ドルの罰金を命じられたことです。また最近では、人気ゲーム「原神」でのガチャに関する問題があります。「原神」 は、ユーザーの年齢確認を行っていなかったため、開発元であるCOGNOSPHEREは、児童オンラインプライバシー保護規則(COPPA)に違反していると判断されました。

 その結果、米連邦取引委員会(FTC)は2025年1月18日、「原神」の運営元に対し、2000万ドル(約31億円)の罰金支払いを命じる和解案が提示されたのです。

 こうした動向はゲームの市場に、大きな影響を与えています。ゲームの開発に携わった方ならご存知かと思いますが、ユーザーが最初に設定するフロントの設定の1機能を変更するだけでも、手作業が大量に発生し、多くの部分が壊れてしまう可能性があるのです。

 また、ゲーム業界では、ソーシャル機能や決済について、保護者や政府からの要求水準が急速に高まっています。そのため、我々は各国の規制当局やESRBなどの格付け機関と緊密に連携し、最新の規制動向を常に把握することで、クライアントのコンプライアンス対応を支援しています。

 特にアジア地域では、日本、韓国、シンガポール、オーストラリアなどと強い連携を持ち、政府当局の指導内容を随時データベースに反映させています。これにより、ゲーム会社が新市場に進出する際のコンプライアンスリスクを最小限に抑えることが可能となっています。

──Oktaの投資会社から選ばれた理由についてお聞かせください。

Donovan氏:我々が提案した「Okta for Kids」というコンセプトに共鳴していただいたことが大きいですね。98のファンドが参加した中で、戦略的投資家は2社で、その1つがOktaでした。

 Oktaは企業向けアイデンティティ管理で実績がありますが、若者向けのサービスにおいては、テクノロジー以上にコンプライアンス対応が課題となります。ここが我々の強みで、Win-Winの関係を築けると考えています。今後Oktaとの連携によって、ゲームやオンラインサービスなどの日本市場で展開していきたいと考えています。

1月25日には、ゲーム「原神」の和解や米国の規制動向に関して、Oktaオフィスで日本のゲーム企業向けのセミナーが開かれ、Donovan氏が講演を行った。

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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