アマゾン ウェブ サービス(AWS)は、調査レポート「Unlocking Japan’s AI Potential 2025(2025年、日本のAIの未来を切り拓く)」を発表した。
同調査レポートによると、日本におけるAI導入が加速を続ける中、スタートアップ企業は数年前には不可能だったAIを中心としたまったく新しい製品やビジネスモデルを構築しているという。一方で、多くのスタートアップ企業は依然として制度上の大きな課題に直面しているとのことだ。スタートアップの33%のみが日本はスタートアップにフレンドリーなビジネス環境を提供していると感じており、イノベーションの可能性と実感している支援との間にギャップがあるとしている。
AI導入は勢いを増しており、日本では2024年に36万社の企業がAIソリューションを導入し、これは約2分に1社のペースに相当するという。日本企業の43%にあたる150万社がすでにAIを導入しており、これは1年前の33%から上昇し、前年比30%の成長率を示すとしている。特筆すべきは、日本のスタートアップの8割以上(84%)がすでにAIを導入しており、大企業の導入率68%や全国平均の43%を上回っているとした。
日本のスタートアップ企業がAIイノベーションを牽引
日本全体でAI導入は広がっているが、ほとんどの企業は最も先進的な用途をまだ活用できていないという。日本企業の72%は、AIを用いた効率化やプロセス合理化といった基本的なユースケースに主に焦点を当てており、新製品開発や産業破壊といったイノベーションには至っていないとしている。日本企業の7%のみがAI導入の中間段階に進んでおり、AIが単なるツールではなく製品開発、意思決定、ビジネスモデルの中核となる最も変革的な段階に到達しているのは13%とのことだ。
一方、日本のスタートアップは特に熱心にAIを導入しており、最先端の用途で活用しているという。すでにAIを導入している日本のスタートアップのうち、36%が完全に新しいAI機能を搭載したAI駆動型製品を開発し、この技術の可能性を最大限に活用しているとした。対照的に、AIを導入している大企業のうち、AI駆動型の製品やサービスを提供しているのは11%で、包括的なAI戦略を持っているのはわずか8%。日本のスタートアップは、オーストラリア(スタートアップの導入率81%)と並び、ヨーロッパの平均(スタートアップの導入率58%)を上回る84%の導入率で、グローバルリーダーとして台頭しているという。
このような機動的なスタートアップは、日本のイノベーション経済を促進し、AIリーダーシップをめぐる世界的な競争の重要なプレーヤーとなる可能性があると同社は述べる。しかし、このイノベーションギャップは、テクノロジー主導のスタートアップがより急速にイノベーションを起こし、大企業を上回るペースで進む「二層経済」が出現するリスクも示しているとのことだ。
AIスキルギャップと規制の不確実性が深いAI導入の主な障壁
日本企業がAIの採用や拡大を妨げている主な理由として、熟練した人材の不足を挙げたとしている(39%)。多くの企業が技術とビジョンは持っているものの、それを実現する人材を見つけることができないと答えたという。AIリテラシーは将来的に37%の企業で必要とされると予想されているが、現在の従業員のスキルセットに対して準備ができていると感じている企業は25%。これは日本の国際競争力を危うくし、経済的潜在力を制限しているという。また、資金調達は日本のスタートアップにとって特に重要な要因であり、50%が成長環境の創出にベンチャーキャピタルへのアクセスが重要だと述べている。
加えて、調査では日本の提案されているAI法に関する議論を理解し、その法制がどのように機能するかを説明できる企業はわずか14%であることが判明。日本企業は予算の22%をコンプライアンス関連のコストに費やしており、47%が今後3年間でその数字が増加すると予想しているとのことだ。
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