今回の共同検証は、具体的には、現在主流となりつつあるAll Flashストレージ「EMC XtremIO」を用いたTDI(テーラードデータセンター統合)上で構築された「SAP HANA on VMware vSphere 6.0」において、「SAP S/4 HANA」の構築、および運用に関する実証検証を実施することにより、「SAP HANA VMware on vSphere 6.0」環境における運用のベストプラクティスを確立したという。
検証の目的
「SAP S/4 HANA」に代表されるSAP製品の統一的なデータベースプラットフォームであるSAP HANAは、今後TDI上での稼働が増えることが見込まれるという。このTDI環境において利用可能な仮想化ソフトウェアである「VMware vSphere 6.0」は、今年10月に非本番でSAP HANA認定を取得し、近日中に本番環境でもSAP HANA認定を取得予定だという。
そこで、今後利用が広がるであろうTDI環境における「VMware vSphere」環境での運用技術を確立させ、合わせて高い運用性、操作性を有するAll Flashストレージが高速性だけでなく運用性にも秀でていることを実証することが今回の検証の目的だとしている。
検証概要
今回の取り組みにおいては、検証目的に沿って、従来のアプライアンス製品との比較をする形で次の検証を実施した。
- 検証1:「VMware vSphere High Availability」「VMware vSphere vMotion」によるHANAのサーバ移動に伴う検証
- 検証2:高速な「HANA Storage snapshot」と「XtremIO snapshot」を活用したSAP開発環境の構築
- 検証3:HANAの稼働条件毎のパフォーマンス測定:HANAインスタンスの単体稼働/共通のAll Flashストレージ上で稼働する複数のHANAインスタンスの稼動/ローカルHDD上で稼働するHANAインスタンスの単体稼働
- 検証4:「VMware vSphere」テンプレートからのHANA環境の構築
参加各社の役割
共同検証にあたった各社の役割は次のとおり。
- EMCジャパン:COIL環境へのXtremIOを提供し、ストレージ設定および検証評価における性能値の採取手順化など、All Flashストレージを活用するノウハウを提供
- NTTデータGSL:NTTデータグループ傘下のitelligence社における「VMware vSphere 5.5」上での「SAP HANA on VMware vSphere」によるホスティング実績を基にしたTDI環境構築ノウハウの提供と、仮想OS設計、構築およびストレージ設定を担当
- JSOL社:「SAP Business Suite powered by SAP HANA」の本稼働実績および「SAP S/4 HANA」プロジェクト推進(導入中)の経験を踏まえた、稼動OS上でのSAPベーシス作業および各種検証評価を担当
- VMware社:検証用の「VMware vSphere 6.0」を提供し、仮想化上のSAP HANAのテスト環境構築と、「VMware vSphere 6.0」の機能を活用したテストの実施に対するナレッジを提供
- Cisco社:UCSサーバおよびNEXUSの提供および検証シナリオに対する技術的なナレッジ提供を担当
- SAP社:COIL Tokyoおよび付随するSAPソフトウェアの提供、およびJSUG(Japan SAP User's Group)など取り組み公開の場の提供を担当
検証結果
従来のアプライアンス製品との違いという観点も含めて検証結果を別紙の通り整理した。今回の実証検証によって、「SAP HANA on VMware vSphere」とAll FlashストレージXtremIOを組み合わせたSAP TDI環境であれば、インフラ投資に対するコスト削減や高いストレージ運用性を実現できることが確認できた。また、検証を通じて各検証環境の構築、操作手順も整備することができたという。
TDIのメリット
SAP HANAがミッションクリティカルな「SAP Business Suite powered by SAP HANA」や「SAP S/4 HANA」のプラットフォームとして普及するに従い、重要なデータは信頼性の高いエンタープライズ・ストレージに保存することが重要となっている。
このことから、昨年よりSAP HANA(特に「SAP Business Suite powered by SAP HANA」や「SAP S/4 HANA」)の導入では、エンタープライズ・ストレージを組み合わせたTDIが一般的になっている。また、分析用途ではデータ量の増加にともない、SAP HANAのScale-out構成が普及してきている。このSAP HANA Scale-outでは、TDIなど外部ストレージを前提にしている。
XtremIOのメリット
今回のTDI構成では、XtremIOという高性能All Flashストレージを使っている。従来、SAP HANAでは「インメモリDBなのでストレージ性能は関係ない」とSAP HANAのインフラではAll Flashストレージの利用は限られていた。
しかし、SAP HANAベースの分析では、データ量の増大とともにHANA Dynamic TieringやSAP IQを使ったデータ階層化が一般化すると考えられており、SAP HANA環境であってもAll Flashストレージのような高性能ストレージの重要性は高まっていくとしている。
効果
- ストレージにAll Flashストレージを採用することにより、SAP起動時間の高速化が実現され、オンラインサービスレベルの向上が図ることができる。
- SAP HANAおよびストレージのスナップショット機能を活用することで、次のようなメリットが得られる:短時間でSAP開発環境を構築できることから、新規業務要件のための開発インスタンス早期立ち上げなどが可能/一時的なアプリケーション検証後、あるいは障害時に必要となるSAP HANAのDBリストアが迅速かつ容易に実施可能。
- 「VMware vSphere 6.0」の機能を活用することで、ダウンタイムの排除が可能になり、仮想化されたSAP HANAを自動的に再起動する仕組みで高可用性も実現。
- 「VMware vSphere 6.0」からサポートされる1ESXiサーバ上での複数HANAインスタンス稼働を行うことにより、既存物理サーバのリソースの有効活用が期待できる。
今後は、今回の検証結果をもとに、各社においてインフラ投資の観点でコスト効率の高い「SAP HANA on VMware vSphere 6.0」および高い運用性、操作性を有するAll FlashストレージXtremIOを利用したSAP TDI環境の構築を推進していくとしている。