上位1番目/2番目の成熟度にある国内ユーザー企業は1割に満たず
この調査(2016年7月実施)では、IDC MaturityScapeに基づいて、国内のエンタープライズモビリティに取り組む従業員500人以上の企業に勤務し、かつエンタープライズモビリティの戦略や計画に関する意思決定に関与する立場にある部課長職以上の200人に対してWebアンケートを実施し、この調査結果をもとに国内のユーザー企業の成熟度を分析した。
IDC MaturityScapeでは、特定のIT環境について、まったく導入していない場合をステージ0(未導入)とし、導入後のユーザー企業の成熟度を、ステージ1(個人依存)、ステージ2(限定的導入)、ステージ3(標準基盤化)、ステージ4(定量的管理)、ステージ5(継続的革新)の5段階で評価する。
その結果、国内ユーザー企業においては、ステージ1の成熟度を持つ企業が12.8%、ステージ2が55.1%、ステージ3が23.4%、ステージ4が6.6%、ステージ5が2.0%だった。米国での同様の調査では、ステージ4とステージ5の合計が3割弱であるのに対し、国内では1割に満たないことがわかった。
米国に比べ取り組みの遅れは顕著。グローバル競争下では競争劣位に陥る要因に
成長期の端緒にあるテクノロジー市場では、その導入/展開によってビジネス成果を出している企業が投資を拡大する一方、競合企業が追随して投資を積極化することで競争が活性化される。
国内のユーザー企業においてその構造をけん引すべきステージ4/ステージ5にある企業の構成比率が低いことは、米国に比べてモビリティを活用したビジネス競争が活性化されにくいことを示唆している。
このことは、グローバル競争に晒されている国内企業が、エンタープライズモビリティに対する投資姿勢を改めないと、競争劣位に陥る可能性が高いことを示しているといえるとしている。
IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーの敷田康氏は「本調査レポートの結果を見た国内企業の中には、『エンタープライズモビリティの国内企業の成熟度は思いのほか低い』と安堵する企業があるかも知れない。しかし、これを差別化のチャンスと捉える企業とそうでない企業とでは、今後、顧客満足度や従業員の生産性といった領域で競争力に差が出てくるであろう」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「IDC MaturityScape Benchmark: 国内エンタープライズモビリティ市場」にその詳細が報告されている。
IDC MaturityScapeは、特定市場におけるICTユーザー企業の市場競争力の維持あるいは競争優位の確立に寄与することを意図して開発されたもので、ユーザー企業のその市場におけるICT成熟度を規定し、ICT環境のあるべき目標や他社との乖離状況の把握を可能とするフレームワーク。