「2016年は企業買収、新事業が功を奏し堅調な成果をあげた。ここ数年アグレッシヴな成長を続け、2015年から2021年の間では倍以上の売上になるだろう」(徳永社長)
アカマイ日本社長の徳永信二氏は初めに、2016年度の売上は前年度比35%の成長、顧客数も12%伸び590社となったことを発表し、セキュリティやWebパフォーマンスの分野でトップクラスのポジションを築けていることを強調した。そしてアカマイの事業領域は「Webパフォーマンス」「クラウドセキュリティ」「メディアデリバリー」「クラウドネットワーキング」の4分野であると述べ、各分野の2017年のロードマップを発表した。とくにメディア・コンテンツデリバリーの分野での強みを活かし「画像ファイルの変換・最適化・配信の自動化」「セルラー網での最適化」「モバイルアプリでの高速化とSDKの提供」「パフォーマンス自動チューニング」をおこなうという。
Soha Systems買収によるエンタープライズ分野の強化
今年の重点項目としてはエンタープライズ領域の強化となる。昨年買収したSoha Systemsの技術を実装した「Enterprise Application Access」により企業のリモートアクセス、ネットワークアクセスを柔軟にするものだという。また動画配信市場の今後の急激な伸びに対応するために低レイテンシーでのライブ動画配信やよりタイムラグの少ない高画質配信技術を強化する。
この日、アカマイはラックとの提携を発表しラックのセキュリティ監視センター(JSOC)とアカマイのWebセキュリティソリューションを統合したマネージドセキュリティサービスを提供すると述べた。
ラックの常務執行役員の山中氏は「ラックは数年前からアカマイにラブコールを送ってきた。協業の背景としては大規模なクラウド型セキュリティの必要性の高まりがあり今後両者でワンストップのセキュリティ運用・監視サービスを展開する」と述べた。
Miraiへの対策
また米Akamai本社のロジャー・バランコ氏はセキュリティレポートの最新の内容を発表した。特長としては「DDOS攻撃」「Webアプリケーション攻撃」だという。
とくにIoTデバイスに感染するマルウェアのMiraiについては深刻で、2016年の第4四半期におけるトラフィックが100Gbps以上ある12の大規模攻撃のうち7つはMiraiが直接関係しているという。とくにMiraiの攻撃対象は幅広く刻々と変化するため、完全防御は難しいと語り「企業としての守るべき優先順位を意思決定すること」の重要性を強調した。
また続いて登壇した中西氏は最近のWordPress脆弱性を利用したWeb改ざんの影響について語った。「WordPressのREST APIの脆弱性によりWebの改ざんだけでなくマルウェアのダウンロードにまでつながる」と指摘し、WAP(Web Application Protector)のセロデイアップデートを実施すると言う。また緊急時にはラックのJSOCの対応サービスを提供すると述べた。
高度化するインターネット放送、モバイルWebのパフォーマンス向上
これまでのアカマイの最大の強みの分野であるCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)のメディアデリバリー分野では、インターネット放送や4K放送への対応が発表された。
2017年には、低レイテンシーのライブ放送、4K放送のためのQUICKのサポート、ピークトラフィックのための分散プラットフォームの拡張などをおこなうという。
「視聴動画の遅延を現在の60秒から8秒から10秒に短縮し、よりリアルタイムに近いインターネットのライブ放送を提供する」(プロダクトマネージャー 伊藤崇氏)
Webパフォーマンスの領域ではモバイル対応が重要となるという。特に近年モバイルの急激な成長によって「高速性」が改めて課題になっており、モバイルコマースやAPI連携によりモバイルウェブのレスポンス、速度へのソリューションを強化するという。
たとえばモバイルのWebでは、RWD(レシポンシブルウェブデザイン)とマルチデバイス通信の2種類があるが、前者の場合低解像度デバイスにまで過剰に重い画像を送りがちで、後者はWebの運営者に「画像加工」という負荷をかけている。この課題の解消のために提供するのが、「Ion 3.0」というモバイル対応の配信基盤だという。
「モバイルのためのプッシュ型のコンテンツ配信基盤、セルラー(3G、4G)向けのSDK、画像コンテンツの自動最適化などを提供していき、IoTなどの“モバイルの先の時代”に対応していく」(プロダクトマーケティング マネージャー 北かおり)
さらに2017年度にはIoT市場向けにさらにあらたなソリューションも発表する予定だと締めくくった。