LOB支出の割合が高い産業は製造、小売、情報サービス、建設/土木
2017年は、国内IT市場におけるLOB部門による支出(Business Funded)が全体の32.1%、3兆7,697億円で、IT部門による支出(IT Funded)が67.9%、7兆9,562億円であり、それぞれの2015年~2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は3.1%(Business Funded)と1.3%(IT Funded)と予測している。
国内企業においては、事業部門のIT支出が進む業務領域がある一方で、IT部門が標準化を進めガバナンス強化を図る領域が共存する構図があると分析している。また、IT部門とLOB部門が連携し新たなIT活用やビジネスモデルの展開が推進され、両部門が対峙するのではなく共同で推進するITプロジェクトが今後増加するとみている。
LOB支出の割合が高い産業分野は、組立製造、プロセス製造、小売、情報サービス、建設/土木分野になる。製造業と建設業においてはエンジニアリングおよび産業固有のオペレーション業務領域のソリューション導入の決定権が事業部にある傾向が強いことと、小売と情報サービスにおけるマーケティングやカスタマーサービス、営業支援の領域を中心に、事業部門が主導的に導入する傾向が強いことが背景にあるとみている。
小規模企業が最も事業/業務部門のIT支出の比率が高い
企業規模別には、従業員規模100人未満の小規模企業が最も事業/業務部門IT支出の比率が高く、7割前後で推移し、企業規模が大きくなるにつれ徐々に割合は減少し、従業員規模1,000人以上の大企業においてはIT部門による支出が7割以上を占めると予測している。
また、最もLOB支出の割合が高い職務機能は、エンジニアリング/アーキテクチャ/リサーチ、マーケティング、営業、サプライチェーンであり、IT支出全体の4~5割を占め、特にLOB主導でシステム選定と導入が進められていく業務領域であると分析している。
昨今、IoTやコグニティブ/AIシステム、AR/VRをはじめとするイノベーションアクセラレーターの取り組みにおいて「実証実験で終了し、その先に進まない」ことが課題として挙がっている。それは、これらのプロジェクトが事業部門単独でIT部門や他部門の積極的な関与なく、小規模に実施されていることと関連しているとみている。
IDC Japan ITスペンディング シニアマーケットアナリストの岩本直子氏は「実証実験をLOB部門と共に進めるITサプライヤーは、そのプロジェクトが継続的な価値を企業にもたらし、顧客が目指すデジタルトランスフォーメーションの実現に貢献するためには、実証実験の提案段階から、ユーザー企業の組織内でのビジビリティ(可視性)を高める支援を含めるべきである」と分析している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内IT市場 LOB支出 産業分野別 企業規模別予測、2017年~2020年」にその詳細が報告されている。