パブリック・クラウドに保存するデータ割合が20%以下と答えた企業が8割
調査の結果、自社で保有するデータのうち、パブリック・クラウドに保存するデータの割合が20%以下であると答えた企業が8割に達していることが分かった。さらに、この割合について2020年までの方針を尋ねたところ、今後3年間でかなり顕著な増加傾向にあることが明らかとなった(図1)。
今回の調査結果について、ガートナー ジャパンのリサーチ部門バイス プレジデントである鈴木雅喜氏は、次のように述べている。
「クラウドを駆使したいという企業のIT部門の意向は強く、それはさまざまな調査結果にも表れています。パブリック・クラウドに保存するデータの割合は今後増えていくでしょう。しかし、こうした意向に反して、現実のクラウドの活用や移行には、可用性やデータの保護といったリスクや、これまでとは異なる管理が必要になるなどさまざまな障壁があり、見込み通りに進んでいない側面もあります。クラウドの利用に踏み切るための準備に時間がかかる、検討に向けた十分な時間がないといった問題をIT部門が抱えている場合も少なくありません。いかに時間を捻出するのか、いかに効率的な検討を進めるのかが、IT部門にとって大きなテーマの1つとなっています」。
今後3年間、自社保有ストレージへの注力を維持または強化すると答えた企業は7割
自社保有のストレージが唯一のデータ保存先だった時代は終わり、データが多様なクラウドに分散していくトレンドが進んでいる。自社のデータを安全に管理することはIT部門の責務だが、その管理負荷は、データのクラウドへの分散が進むにつれて高まる一方である。こうした状況下で、自社保有のストレージへの注力度はどうなっていくのか。
今回のユーザー調査では、今後3年間、自社保有のストレージへの注力を維持、または強化すると答えた企業が7割に達し、逆に、注力を最低限に抑えたり、アウトソースもしくはクラウドに移行したりすると答えた企業は2割にとどまった(図2)。
鈴木氏は、次のようにも述べている。「この結果は、自社保有のストレージに課題を残している企業がまだ相当数存在することを示しています。放置すれば、柔軟性を欠き、コストが高止まりしたストレージ・インフラが、デジタル・ビジネスやIT部門の将来的な活動の足かせになりかねません。しかし、その一方で外部のクラウドに分散するデータを放置するわけにもいきません。期限を区切って自社保有のストレージのコストや柔軟性に関する課題に対処した後に、自社保有のストレージのみではなく、外部のクラウドも駆使してコストの最適化と使い分けを進める次の時代に備えることを、ガートナーは推奨しています」。
2021年までに、自社保有のストレージへの注力度を維持、または強化する日本の大企業におけるIT部門の割合は、半数未満に減少する
これは、「3年後」、すなわち2020年までの方針に関する今回の調査結果を踏まえ、その後の状態を予測したものだ。すべてのストレージ・ベンダーがより容易に導入/活用できる製品の提供を目指しており、性能や容量に関する課題解決の難易度は低下し、自社のストレージにかけるコストと時間を削減する機会が広がっている。必ずしも簡単ではないが、この機会を早期に生かし未来のITインフラに向けた挑戦を、あらゆる日本企業が進めるべきだ。
なお、ガートナーは、4月26日から28日まで、「ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンター サミット 2017」を開催する。サミットでは、ガートナーの国内外のアナリストが、デジタル時代に向けてITインフラストラクチャ戦略をいかに展開すべきかなどについて、さまざまな知見を提供するという。