DXによる変革必要性への認識は経営層・情報システム部門で共有されているが
優先順位が最も高い経営課題をたずねたところ、上位3つの課題は順に「新規ビジネスの創出」「営業力の強化」「ビジネスモデル変革」だった。成熟市場である国内においてDXによる変革を目指す必要があるとの認識が広まっていると考えられる。
これらの認識は、経営層と情報システム部門の間で共有されていた。また、ITの活用によって解決したいとする経営課題は、経営層では「業務プロセスの改善/再構築」を挙げる回答者が突出していた(参考資料1)。これに対して情報システム部門では順に「新規ビジネスの創出」「業務プロセスの改善/再構築」「ビジネスモデル変革」が数ポイント差で並んだ。
つまり、「経営層と情報システム部門の間に存在するITのケイパビリティに対する認識ギャップ」が存在している可能性があるということになる。経営課題を解決する上で、どのようにITを活用すべきなのか、そもそもITを活用できるのか、といった点について、経営層と情報システム部門では異なる認識を持っていまる。
また、情報システム部門は自社の抱える課題としては「経営組織のIT化に対する理解度が低い」を挙げる回答者が目立った。情報システム部門では優先順位の高い経営課題をITで解決したいと考えているものの、経営組織のITに対する理解度が低く攻めのIT活用が進まないといったジレンマを抱えているケースが少なくないと考えられる。
ベンダー選定ではコンサルテーションやソリューションの提案力が重視される
基幹業務システムの抱える課題について情報システム部門にたずねたところ、「保守技術者の確保が困難」「保守性が悪い」「データベース技術の陳腐化による技術者の確保が困難」を挙げる回答者が突出していた。ユーザー調査では、これらの課題への対処方法として、リエンジニアリングを挙げる回答者(課題を抱えている回答者が母数)が4割を超えた(参考資料2)。
レガシーマイグレーションは一通り完了しており、現在残っているプロプライエタリーシステムはカスタムアプリケーションが多いと想定される。延命してきた基幹業務システムを、業務プロセスやビジネスロジックを見直した上で、ITインフラの更新時、抜本的に構築し直す対処方法が望ましいとの意向がある。 DXに向けた新たなIT投資を行う上で、基幹業務システムの経済性、柔軟性、保守性を高めるとともに、競争環境の変化に備え、人的リソースを確保したいとの認識が背景にあると考えられる。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ グループマネージャーの福冨里志氏は「ITバイヤーがDXに取り組む上で、『経営層と情報システム部門の間に存在するITのケイパビリティに対する認識ギャップ』と、一部のユーザー企業において『延命してきたプロプライエタリーシステム上の基幹業務システムの存在』が阻害要因となっている可能性が高い。ITバイヤーにおけるベンダー選定では、これらの阻害要因を取り除くためのコンサルテーションやソリューションの提案力がベンダー選定基準として重視されるようになる」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「2017年 国内エンタープライズインフラストラクチャ市場 ユーザー動向調査:DXとベンダー選定」にその詳細が報告されている。