システムの主な構成要素は「サーバ」「クライアント・デバイス」「ネットワーク」といえるが、前者の2つにはすでに大きな変革が起こっている。すなわち、クラウド・コンピューティングおよびスマートデバイス(スマートフォン/タブレット)の登場により、高いセキュリティレベルのサーバやクライアント・デバイスを誰でも簡単に利用できる時代になっている。
しかし、残るネットワークについては、まだ変革が始まったばかりで、その恩恵を受けている企業は少ないのが現状だ。多くの企業がさまざまな課題を抱えた旧態依然の状態で構築・運用されているネットワークの世界で、いま大きな技術革新が起きている。それは、SDN(Software-Defined Network:ソフトウェアでネットワークを動的に制御する仕組み)というコンセプトになる。
ホワイトペーパーでは、現在ネットワークの世界で起きている技術革新であり、最近ユーザー企業においてもメリットを享受できるようになったSDNを取り上げ、基本概念とその仕組み、および企業における投資意欲について解説している。
ITRの調査では、インフラ/デバイス分野において新規導入可能性(次年度において新規で導入する企業の割合)が最も高いのは「IoT/M2M」で、次いで「SDN」があがっている。「SDN」は投資増減指数(導入企業における次年度の投資額の増減傾向)も比較的高い数値を示しており、2017年度以降も、国内企業のSDNへの投資がさらに増えることが予想される。
さらに、SDNがビジネスにもたらす価値として以下の4つをあげるとともに、SDNの採用で成功した3社の取り組み事例を紹介している。
- 手軽なネットワーク設定や変更などの運用作業
- 仮想ネットワークによる機器点数の削減
- ネットワーク構築のための初期投資を抑制
- 容易なネットワークレベルでのセキュリティ分離
ITRのプリンシパル・アナリスト甲元宏明氏は、「いまIT部門に望まれることは、外部専門家などの協力/助言を得て、経営者や事業部門が持つ自社ビジネスへのさまざまな要求をどのようにすれば実現できるのか検討することです。最近の技術/製品は、機器、機能、能力を後で追加可能なものも多い。新しい技術/製品の採用に不安なIT部門は、最小限の投資で実地検証し、利用状況に応じて能力追加や仕様変更を行うとよいでしょう。現代においては、スピード感を持って新しい技術/製品により自社ビジネスに貢献する前向きな姿勢が必要です」と提言している。