重要視されてきた「IT予算の削減」は過年度調査と比較して優先順位が大幅に低下
国内市場では、すでに多くの企業がクラウドを導入している。また、ITの導入時に、クラウドと従来型ITを同等に評価/検討する「クラウドオルソー」戦略を取る企業が最も多いものの、クラウドを優先的に検討する「クラウドファースト」へのシフトが見られるようになった。
そのような中、国内企業がクラウド導入の促進要因として挙げる項目として「ITセキュリティの強化」が最も多い結果となった。中でも、ホステッドプライベートクラウドサービス(HPCサービス)では、56.0%の企業が「ITセキュリティの強化」を導入の促進要因であると回答している。
クラウドが登場して以来、「IT予算の削減」を導入の促進要因、あるいは期待効果として挙げる企業が多いものだった。2011年~2016年までのユーザー調査では、「IT予算の削減」を挙げる企業が最も多い結果だった。
一方、2017年の調査では、「IT予算の削減」をクラウドの導入の促進要因として回答する企業は減少した。特に、HPCサービスや、オンプレミス型プライベートクラウドであるエンタープライズプライベートクラウド(EPC)では、導入の促進要因の上位5項目には挙げられなかった。このことは、クラウドによるコスト削減効果に対する過剰な期待が是正され、迅速性の向上といった価値を重要視する企業が増加したためだ。
ベンダーはガイドライン整備など、実効性の高いセキュリティ対策支援が重要
クラウド導入の懸念事項として、「セキュリティ」を挙げる企業が最も多い結果となった。国内企業は、クラウドの導入に関して、セキュリティの強化に期待している一方で、懸念を抱いている姿勢が明らかになった。
現在、ベンダーはクラウドに関わるセキュリティの重要性を認識しており、製品/サービスには「暗号化」「アクセス管理」「脆弱性対策」などのセキュリティ対策の強化を進めている。一方、セキュリティを強化するためには、企業の対応も必要だ。しかし、企業におけるセキュリティ対策は、複雑化する傾向が見られ、どこまで実施すれば良いか分かりづらくなっている。
IDC Japan ITサービス リサーチディレクターの松本聡氏は「ベンダーは、情報の機微性といった視点によってシステムのリスク特性を分析し、リスク特性に応じたセキュリティ対策のガイドラインやテンプレートを整備し、実効性の高いセキュリティ対策を実現するように、企業のクラウド導入を支援することが重要である」と分析している。
今回の発表について詳細は、IDCが発行したレポート「CloudView 2017:国内企業のクラウドに対する期待は、コスト削減からセキュリティの強化へ」に掲載されている。