クラウド上での情報系データベース運用はもはや当たり前
谷川氏:クラウドについても、ぜひ皆さんの見解をうかがえればと思っています。少し前までは、「クラウド上でリレーショナルデータベースを動かすなんて無謀だ」と言われていましたが、今ではわりと当たり前に使われていますよね。
永安氏:基幹系はともかく、情報系に限っていえばわりと普通になってきています。皆さんもうある程度経験も積んで、いろんな課題や落とし穴も見えてきていますし、結構こなれてきた印象を持っています。私自身は基盤系のエンジニアなので、どうしても「自分でコントロールしたい」という欲求が強いのですが、でも費用対効果を考えるとやはりクラウドへの移行は避けられないでしょうね。
恩田氏:そうですね。クラウドに上げるデータの種類にもよると思いますが、外部に出すことにあまり抵抗がない情報系のデータであれば、クラウドデータベースはだんだん当たり前になりつつあると思います。またクラウドには、GCP(Google Cloud Platform)のBigQueryのように、データベースエンジニアが不要と言われるデータベースサービスもあります。これらはオンプレミスで使われてきたリレーショナルデータベース製品とは、かなり作法が異なるのですが、その違いを理解した上で使いこなせると大きな武器になります。
ミック氏:確かに、クラウドを利用する際には、これまでとはある程度考え方を切り替える必要がありますね。例えばデータベースの可用性を担保するにしても、オンプレミスでやっていたように「共有ディスクベースで待機系を組んでクラスタリング」という方法ではなく、「レプリケーションであちこちのロケーションにデータを飛ばしてプライマリ・セカンダリの構成を組む」といった具合に、クラウドのやり方に頭を完全に切り替えて、そのサービスレベルの範囲内で満足できるのであれば、クラウドのデータベースは全然アリだと思います。
斉藤氏:私も個人的にはアリだと思っています。ただ、一時期言われたようなクラウドのセキュリティに対する不安はかなり払拭されたとはいえ、まだまだ見えない部分も多いので、実際には外に出すデータと内部できっちり守るデータをきちんと分ける必要はあるでしょうね。
谷川氏:確かに、クラウド上でデータベースを使うといっても、実際には仮想ネットワークで接続してほぼプライベートクラウドと同じ状態で使っているケースがほとんどですからね。
野間氏:そんな中、IBMでは「Db2 Warehouse on Cloud(WoC)」を筆頭に、クラウド上にDb2でDWHを作るという戦略を最近明確に打ち出していますが、これについてはどんな感想をお持ちですか?
斉藤氏:小さく始めて大きく育てられるというのがクラウドの大きなメリットの1つですが、これはDWHと極めて相性がいいといえます。昔ならたとえDWHであっても、あらかじめデータベースのキャパシティプランニングを厳密に行う必要がありましたが、クラウドなら将来どうキャパシティが増減するか分からないシステムでも、小さい規模からスモールスタートできます。
苧阪氏:Db2 Warehouse on CloudはAWSのRedshiftと同じくMPP構成 (超並列処理)をとっており、スケーラビリティに優れています。また、自動的なデータ圧縮や暗号化、索引のチューニングコストを大幅に削減する、といったテクノロジーを押し出しており、 他ベンダーのクラウドサービスと比べた場合、エンドユーザーにとっての使いやすさ(LOAD&GO)を重視しています。
恩田氏:がちがちのインフラ系の人にとってはRedshiftのようなサービスがいいのかもしれませんが、「データはあるので、今すぐ分析したい!」というニーズを持っているお客様に対案する場合には、GUIベースで簡単に使えるDb2 Warehouse on Cloudの方が向いているかもしれませんね。