アラブのIT見本市で表彰
グローバル規模で見ると、日本のベンチャー企業を取り巻く環境は厳しいようだ。一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)が2017年11月に公開した年次報告「ベンチャー白書2017」によると、日本のベンチャーキャピタルによる2016年度の国内投資額は前の年度比25%増の1092億円、投資件数は1108件と同16%増加した。国内投資を業種別に見ると、「IT(情報技術)関連」が47%で、約半数占めている。さらに、バイオ・医療・ヘルスケア」は24%で、前年度の19%から5ポイント増加している。
しかし、世界と比較した場合、日本の投資額はケタ違いに少ない。2016年度のベンチャーキャピタルによる投資額は欧州が5300億円、中国が2兆円だ。さらに、米国では7兆円超となっている。デジタルトランスフォーメーションや新技術開発の遅れが指摘されている日本だが、この数字を見るだけでも、世界の後塵を拝している要因の一端が理解できるだろう。
そのような苦境(?)の中でも、世界から注目されている日本のベンチャー企業がある。それが、ポータルケアクリニック(PCC)事業とICTセルフケア事業を手掛けるスマートメディカルだ。
スマートメディカルは2017年2月、アラブ首長国連邦(UAE)内務省と「幸福事業」における基本合意書を締結した。同社の音声気分解析技術を搭載した「Empath」がUAEの「幸福度促進事業」で利用される。同社は、2017年10月にアラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催された「GITEX Technology Week 2017」にも出展。ベンチャー企業を対象にしたコンテストのAI部門で優勝した実力派である。
余談だが、日本で「GITEX」はあまり馴染みがない展示会だろう。しかし、世界70の国と地域から4100超の企業や政府組織が出展する同展示会は、中東・アフリカ・南アジア地域最大のものだ。B2B(企業間取引)製品だけでなく、B2G(政府/自治体を対象にした取引)製品の出展も多いことで知られている。特にアラブ政府(官公庁)も数多く出展するため、いろんな意味で見所が満載なのだ。
本稿ではUAE政府が取り組む「幸福事業」とともに、同国内務省が惚れ込んだ音声から人間の感情を分析する「Empath」を紹介したい。