デジタル貿易やデータ移転は誰にとってどんなメリットがあるのか
――まずは、BSAの紹介をしていただけますか。
BSAはソフトウェア企業の声を代表する非営利団体で、アメリカのワシントンDCに本部があります。会員企業の多くはアメリカを拠点に置くグローバルなテクノロジー企業です。大きく分けると3つ。1つ目は伝統的なソフトウェア企業でアドビやマイクロソフトなど、2つ目はハードウェア中心でありつつもソフトウェアにも投資をしている企業でIBM、インテル、アップルなど、3つ目はソフトウェアを箱で売ることをせずクラウドでサービスとして提供している企業でSalesforce、Splunk、AWSなどです。BSAはこれらの企業を結びつける団体です。近年私たちが注視しているのは個人情報保護、サイバーセキュリティ、越境データフロー、それからデジタル貿易などです。
――「デジタル貿易」とは具体的に何を指しているのでしょうか。
第二次世界大戦後に経済が発展したのは国際的なモノとサービスの移転が進んだからです。ここ2~30年はデータの取引がインターネットを介して行われ、経済発展に結びついています。デジタル貿易とはトレードでありサービスでもあります。
例えばインドネシアにある小さな企業がWebサイトを通じて自社の手工芸品をヨーロッパに販売することができます。またはインドの大企業がクラウドサービスプロバイダーを通じてブラジルや中国と共同研究をしたり、人事関係の情報を扱うこともあります。
クラウドコンピューティングの普及で企業や組織は規模によらず、コンピューティングパワーやデータ保存などのITをアウトソースできるようになりました。知識や専門性に投資することなく、本来の目的に集中することができます。目的とは事業体によりますが、市民サービスだったり、靴の販売だったりします。クラウドをベースとしたサービスでは、規模の経済というのがあるため、顧客規模が大きいことやグローバルにサービス展開できることが重要になります。
一方で各国政府は個人情報保護、サイバーセキュリティの観点で規制をかけようとしています。正当な規制ではありますが、経済活動への障害となり、経済成長を阻害してしまうことにもなりかねません。BSAの会員企業には重要な問題となります。
――デジタル貿易についてのBSAのポジションを教えてください。
現在のデジタル経済において、越境データ移転は非常に重要で必要不可欠なものです。人間なら血流にあたります。インターネットはもともとボーダレスで成長しています。企業においてもデータベースや帳票など、組み合わせることで情報の活用ができるようになります。BSAはデジタル貿易を促進することで経済発展につながると考えています。
――データ移転が促進することでメリットを享受するのは誰でしょうか。
経済的なメリットは幅広く行き渡ると考えています。我々の会員企業なら、データ移転や自由化が進むと自らのサービスをグローバルに展開できるようになります。加えて会員企業の顧客にもメリットがあります。
例えばエネルギー、農業、観光業界ではデータが重要になります。越境データフローを自由化し活用することで、事業やオペレーションが活性化し、イノベーションを起こすことができます。こうした企業が雇用創出や新サービスを提供すれば、実体経済に影響を及ぼしていくことになり、結果的に多くがメリットを享受することになります。