システム全体を統合するためAzure PaaSを活用したSoEを構築
これらの問題を解決するためアサヒビールは2017年4月、「複数の営業基幹システムをSoEによって統合する」という取り組みに着手する。
「当初はSaaSによって営業システム全体を刷新することも検討しましたが、既存システムからSaaSへと一気に置き換えてしまうのは簡単ではないと感じました」と語るのは、アサヒグループの経営共通基盤を担うアサヒプロマネジメントで、業務システム部 主任を務める塙 圭介氏。営業担当者の負担とリスクを最小化しながらシステムを統合するには、既存システムを活かしながら、新技術への対応が可能なプラットフォームを実現すべきという結論に至ったという。
そのような検討の中で参考になったのが、4万人のユーザーが利用するレガシーシステムをMicrosoft AzureのPaaS機能でモダナイゼーションした事例である。この事例を知ったとき「アサヒビールの営業基幹システムも同じアプローチで統合できるはず」と確信したと語る。
2017年10月にはAzureの採用を正式決定。その翌月から開発作業がスタートする。構築されたシステムは下図に示すとおり。Web Appsによるユーザー インターフェイス、キューイングとFunctionsを組み合わせたバッチ処理基盤、Cosmos DBやBLOBストレージによる共通データ基盤などから構成されており、社内システムとはExpress Routeで接続されている。
「今回のシステム開発ではAzureの幅広いPaaS機能を活用しており、それに合わせて開発手法も従来のウォーターフォール型からアジャイル型へシフトしています」と語るのは、アサヒグループでITソリューションの企画・提案・開発・保守運用を担当する、アサヒビジネスソリューションズ ソリューション本部 開発統括部の塩田 弘毅氏。
2017年12月には既存システムにREST APIを追加し、これによってAzure上のシステムとの疎結合も実現しているという。「Azureには実にさまざまなサービスが用意されており、これらを組み合わせることで多様な課題を解決できます。また機能選択も柔軟に行うことができ、システムを段階的に成長させることも可能です。これなら既存システムをそのまま活かしながら、最新技術を活用したシステム刷新が実現できると感じました」。
また塩田氏と共に開発に参加した、アサヒビジネスソリューションズ ソリューション本部 開発統括部の小林 和可奈氏は「このようなPaaSを活用した開発は当社としても新しい取り組みであり、アジャイル型の開発スキルを蓄積できました」と述べている。