日本のDevOps、現状は出遅れている
デジタル変革が求められる中、様子見を続けている
ガートナーの調査によると、DevOpsを本番環境に適用している企業は、グローバルでは41%(調査対象はガートナーの顧客企業)。一方、日本では、それが11%しかない(調査対象はガートナーの顧客以外の企業も含む)。さらに、「今後DevOpsを導入する予定がない」と回答している企業が、グローバルでは19%なのに対し、日本では28%。「グローバルでは、DevOpsを適用している企業が年々増えています。日本では今後導入予定がない企業は減っていますが、実際に適用している企業はなかなか増えません」と阿部氏は言う。現状、日本はまだ「様子見」をしている。
この傾向は、DevOpsのハイプ・サイクルにも現れている。2017年段階、日本ではDevOpsが過度な期待のピーク期から幻滅期の入り口に位置付けられている。一方、グローバルは既に幻滅期だ。幻滅期にあるグローバルでは、「DevSecOps」とDevとOpsの間にセキュリティを含めて考えるのも普通。グローバルにおけるDevOpsのディスカッションテーマは、関わる人材やその資質、スキルをどうするか、DevOpsを進める組織体制はどうすべきか、企業としての標準フレームワークは何か、適用範囲を拡大するにはどうするかなどテーマが細分化されている。一方、日本ではいまだ、DevOpsをやるかやらないかといった話題ばかりだ。
「日本では、DevOpsを進める前提での議論となっていません。それが現状であり、個人的にはちょっと憂いています」(阿部氏)
DevOpsが進まない日本でも、企業にはデジタル変革が求められている。デジタルビジネスに手を付けなければ、デジタル技術を武器とする競合に市場を奪われてしまう。そのため、多くの企業は「デジタル技術を駆使しして、新しいサービスをタイムリーに市場提供したい」、「新規サービスを市場に投入してあまり効果的でなければ、迅速な撤退もできるようにしておきたい」と考える。
「これらは、IT観点ではDevOpsの目指す姿そのものです」と阿部氏。DevOpsが企業に適用されていなければ、継続的かつ競争力のあるデジタル変革はできない。そのため、ITシステムの運用を担うオペレーション側の人にも、企業がDevOpsに取り組むべき理由を考えて欲しいと言う。
企業がデジタルビジネスを指向するには、SoE(System of Engagement)である「モード2」のITに取り組む必要がある。多くの企業にとってモード2を回すには時間がかかるだけでなく、その中では失敗も経験する。失敗も加味して、モード2を自分たちのものにする。こういったアプローチは、DevOpsの「リーン」かつ「アジャイル」な体制が最適なのだ。