各ベンダーが今、真剣にAIや機械学習技術の活用に取り組んでいる。先日のセールスフォース・ドットコムのように自社サービスにAIを取り込みそれを優位性にする取り組みもあれば、IBMのWatsonのようにAIや機械学習技術そのものを売りにするサービスもある。ERPパッケージ製品のトップベンダーSAPも、AIや機械学習の活用には力を入れている。SAPの場合は、自社のERPのアプリケーションにもAI、機械学習技術を積極的に取り入れると同時に、「SAP Leonardo」としてAI、機械学習、IoT技術を用いてデータを活用するトータルなソリューションも展開している。
SAPならビジネスプロセスの中ですぐにAIを使え、それをSoE領域のSAP Leonardoと組み合わせられる
各社がAIや機械学習技術の活用に取り組む中、SAPならではの特長はいったいどこにあるのだろうか。
「SAPには、企業のビジネスプロセスを改善してきた長い経験があります。たとえば会計部分では20年以上もそのプロセスを最適化してきました。その経験を活かし、企業のビジネスプロセスにAIや機械学習技術を適用しています。他ベンダーの多くが、AIや機械学習がテクノロジーのためのテクノロジーになりがちなのに対し、最初からビジネスプロセスの最適化にAI技術を使っているのです」

SAP
アジアパシフィック及び日本地域にて、デジタルコア&インダストリーソリューションを担当する
シニア・バイスプレジデント
ポール・マリオット氏
SAP アジアパシフィック及び日本地域でデジタルコア&インダストリーソリューションを担当するシニア・バイスプレジデント ポール・マリオット氏は、ビジネスプロセスの中にAIや機械学習の技術を取り込むことで、SAPは新たなベストプラクティスを提供している。
SAPがこれを実現できるようになったのは、インメモリデータベースのSAP HANAがあってこそだ。すでにHANAには10年の実績があり、インメモリデータベース領域のリーダーポジションにある。このHANAを活用することで、膨大なデータを迅速に処理できるようになり、新たなAIや機械学習技術の活用が可能になった。このHANAの強力なデータ処理能力と長年に亘るインダストリーナレッジがあることで「SAPは今後もさらにAI、機械学習の活用シーンを広げていけます」とマリオット氏は自信を見せる。
実際SAP HANAは、高速なインメモリデータベースとしてだけでなく、AIや機械学習技術を活用するためのさまざまな機能がデータベース内部に既に実装されている。たとえば、Chat botなどで自然な文章対話を実現できるようにするために、HANAにはNatural Language Processing(NLP)が組み込まれている。
「NLPは文章の意味を理解するための機能です。HANAを使って文章の意味を理解し、質問から最適な答えを見つけ出すことができるようになります」(マリオット氏)
この文章の意味を理解するNLPについては、SAPでは25年ほど前から大学などの研究機関と協力し取り組んでいる。NLPは当初、ハードウェアもソフトウェアも十分な性能がなくコストもかかり、実用的ではなかった。それがSAP HANAの登場により、必要な性能も機能も確保できるようになり、コストも現実的なものになったのだ。
NLPに関しては英語だけでなく他言語についても取り組んでおり、日本語も優先度の高いものの1つと位置づけられているとのこと。NLPなどを活用することで、AppleのSiriのような音声インターフェイスをSAP ERPのビジネスプロセスで活用できる。また何らかプログラムを組みコマンドレベルの操作で人が意図的にS/4HANAの中から必要な情報を取り出すのではなく、NLPを活用しS/4HANAのデータを機械学習学習してビジネスプロセスの必要なタイミングで、必要な情報を自動で抽出しユーザーに提示することも可能となる。
「ビジネスプロセスを何度も繰り返していけばさらに学習がなされ、より的確な情報をユーザーに自動で提供できるようになります」(マリオット氏)
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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