優位性獲得にはリリースサイクルの短期化が必須
なぜ、ビジネス差別化にデータ活用が求められているのでしょうか。システム開発の観点で考えてみます。最近のIT業界では短期間に数多くのサービスがリリースされるようになっており、たとえば金融・保険業界では契約や取引がオンライサービスでできるのが常識になりつつあります。 そういったオンラインサービスは、掘り下げれば提供会社ごとに異なる特徴を持っていますが、サービスを初めて認識した利用者には違いが判別しづらいことがあります。この場合、利用者は新鮮さ、期待感があるサービスに飛びつく傾向があります。したがって、サービスリリースが速いほど、新規顧客を獲得できる可能性が高まるのです。 また、最初のリリースが速いだけでは継続的に顧客を留めておくことができません。例えば、あるサービスが使いづらいので改善してほしいという要望に対する改善が遅いと、顧客が別のサービスに乗り換えてしまうというリスクがあります。したがって、継続して顧客を維持するためには修正対応にもスピードが要求されます。つまり、製品やサービスを市場に提供するスピード自体が競争優位性につながるようになってきていると言えるでしょう。そこで、システム開発工期の短縮が注目されています。これを実現するにはテストデータ活用は不可欠となるのです。
リリース短期化のボトルネックとなっている“データ活用”
システム開発工期の短縮の需要に対応するため、テスト環境準備工程も進化してきました。例えば図1にあるように、サーバはより速く簡単に環境が作成できる仮想化やクラウド化が増え、開発手法はウォーターフォールが主流でしたが、アジャイルやDevOpsという手法が選択肢として考えられるようになりました。しかし、これだけでは開発の工期短縮は実現しません。工期を短縮するとはいっても、もちろん品質も良くなくてはリリース後に不具合対応に追われ、工数を費やしてしまうことがあるからです。そこで品質に大きく影響するのがテストデータです。では、テストデータ準備の進化はどうでしょうか。現状、ダミーデータを手動で作成したり、ストレージのコピー機能を使って特定断面のみを準備していたりすることが多いでしょう。
こう見ると、サーバ、開発手法に比べテストデータ準備だけが発展していない印象を受けます。弊社が関わったあるお客様では、サーバ準備、開発手法をいくら高速化してもデータ準備とデータの品質がボトルネックとなり、結局開発工期短縮ができないという悩みを抱えていらっしゃいました。このように、市場に速く製品を出すためには“テストデータ準備”がとても重要です。