2025年7月8日、日本オラクルは、新年度事業戦略説明会を開催した。
日本オラクルは、創業から40周年、東証上場から25周年を迎える中、FY25の総売上高は約8.3兆円、RPO(契約締結済みの受注残高)は約20兆円となった。同社 取締役 執行役 社長 三澤智光氏は「Oracleが再成長をはじめた」といい、(Oracleは)約4.3兆円の大型案件を獲得、日本オラクルとしても通期として過去最高の成長を遂げていると自信を見せる。

「大規模ミッションクリティカルを担うクラウド事業においては、圧倒的な実績をつくれた」と三澤氏。2026年度の重点施策としても、引き続きモダナイゼーション関連ビジネスに注力していきながら、AI活用を支えるためのデータプラットフォーム、ソブリンクラウドの本格展開、マルチクラウド事業の推進、SaaSの強化など、大きく5つを掲げる。
会見では、基幹システムのクラウドリフトをOCIで進めているKDDIからエンドースメントが寄せられ、当初は44システムだった適用範囲を60システムにまで広げているとした。他にも三井住友ファイナンシャルグループでは、Oracle Fusion Cloud ERPによる経理業務の変革を進め、戦略としてFit to Standardを推し進めていることを強調。三澤氏は「AIをきっちりと働かせるためには、Fit to Standardが当然となっている」と話す。
また、ガバメントクラウドについて、地方自治体におけるOCIの導入数は伸長しているとして、パッケージベンダーとの協業を強調。さらに、Oracle Alloyを用いたソブリンクラウドの提供を野村総合研究所や富士通、NTTデータが進めている中、同日「JOC(Japan Operation Center:ジャパン・オペレーション・センター)」が稼働したことを発表した。JOCは、日本在住メンバーによる24時間365日のサポートを提供するもので、Oracle Alloyパートナー企業を支援しながら“日本の”データ主権に沿ったクラウドサービスを提供していくとする。
加えて、Agentic AI(エージェント型AI)アプリケーションへの関心が高まっているとして、「UIは自然言語にとって代わられていく中、そこを支えるデータプラットフォームが重要になる」と三澤氏。基幹システムに格納されたデータを活用するため、他社ベンダーは外付けの“AI専用”データストアを設けることでERPのデータを利用している一方、Oracle Fusion CloudやOracle NetSuiteではデータとコンテキストを一元管理できる“シングルデータモデル”を採用している点が強みだとする。既に152の生成AI機能、54のAIエージェント機能を利用できるとして三澤氏は「データとコンテキストをAIに(完全に)学習させられるからこそ、実現できていることだ」と説明した。
「今後、AIの実践においては、どれだけ多種多様なワークロードを動かせ、マルチモーダルに対応できるかが重要になる。ここに投資を続けてきたのがOracleだ。シングルデータモデルを頑なに守ってきたからこそ、より優れたAIアプリケーションを生み出せる。まさにAIがOracleを再発見し、再発明してくれた」(三澤氏)
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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