AIで着色する「PaintsChainer」、AIが日常になる未来を描いた「AIの遺電子」
AIをよく知る二人がAIを語り合った。その二人とは、第21回 文化庁メディア芸術祭でエンターテインメント部門優秀賞「PaintsChainer」を受賞した米辻泰山氏と、同 マンガ部門優秀賞「AIの遺電子」を受賞した山田胡瓜氏。まずは受賞作品を簡単に紹介しよう。
エンターテインメント部門優秀賞「PaintsChainer」
AIで線画に自動着色するWebアプリケーション。サイトに着色されていない線画をアップロードすると、AIが自動的に着色して出力する。事前に60万枚ほどのカラーイラストと線画(イラストから画像処理で線だけ抽出した)をペアとする教師データを与えており、ここからAIが着色パターンを学習している。ニューラルネットワークのためのライブラリ「Chainer」を用いている。
PaintsChainer
https://paintschainer.preferred.tech/
米辻氏はIoT分野でディープラーニングの研究と開発を進めるPreferred Networksの社員。「ディープラーニングの学習のために本作品を制作しました」と話す。
エンターテインメント部門審査委員の中川大地氏は「絵を作ろうとする時、着色はハードルになります。本作品はAIで創作支援するプラットフォームであり、人間とAIが役割分担するという未来の芸術表現の可能性を提案しています。将来性を高く評価しました」と話す。
マンガ部門優秀賞「AIの遺電子」
AIが組み込まれたヒューマノイドが人間とともに生きる未来を描いたSFマンガ。ヒューマノイドは人間と同等の能力と権利を持ち、人間社会で人間と同じように葛藤しながら生きる。物語はヒューマノイドを治療する医者を中心に展開していく。
山田氏はIT記者から漫画家に転向。連載を企画するにあたり「これまで取材した知識を生かしたい」と、取材時にめざましく発展を遂げていたAIを作品に採り入れたという。
マンガ部門審査委員の白井弓子氏は「AIが発展した先にある世界を描き、『人間ってなんだろう』という哲学的な問いを突き詰めています。1話は短いものの週刊連載でしたので、毎週違う話を創作しており、すさまじい発想力です」と驚嘆しながら評価理由を説明した。