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アシスト関俊洋のエンタープライズ人生相談

世の中に出ている事例ってどれくらいあてになるの? #1


なにかと悩みの多い企業の情報システムまわりの疑問に、アシストの関俊洋さんが淡々と答えます。

【相談】

 ユーザー事例の記事を目にする機会が増えました。自社の導入にあたって参考にしたいという気持ちがある一方で、スムーズに導入されましたという内容が多く、「自社に適応できるのか?」とか、「本当かな?」という気持ちになることもあります。こういった事例記事はどれくらいあてにしてよいものなのでしょうか。また、事例記事の読み方のコツなどありましたら教えてください。

 (製造業/情報システム部門/40代男性)

それは実績か、事例か? いずれにしても事実が重要

アシストの<strong>関:</strong>さんが、これからみなさんのお悩みにお答えします。
アシストの関俊洋さんが、みなさんのお悩みにお答えします。
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関:事例の話の前に、それは「実績」なのか「事例」なのか、というまた観点があるので、そこを先にお話ししたほうがいいですね。

編集部:はい。「実績」と「事例」。似て非なるものですが、具体的な違いは何でしょうか。

関:「実績」というのは、導入したという事実そのものを指します。たとえばあるDBだったら「95社、導入しました」みたいな、社数ですね。こういうような、比較的数字的な情報にとじる場合が多いかなと思います。たとえば95社ぐらいだと「約100社です」とお客様にお伝えした方がわかりやすいですよね。

編集部:ああー、確かに。95よりは100のほうがユーザーの方も数字的に切りが良くイメージしやすいですね。

関:一方「事例」は、特にDBのように形のないもの、ソフトウェアとか、サービスとか、コンサルティングとかソリューションとかいった、見えないものを見える状態にして、かつ、誰某が使ってました、っていうサンプル的なもので、使う前の課題は何だったの?とか、なんでその製品とかを選んだの?とか、どんな効果が出ているの?といった、より詳細な事実を伝えるものです。

編集部:なるほど。でも、実績と事例って結構いっしょくたにされちゃうことが多いですね。

関:一番の違いは主体というか、誰がそれを言っているかですね。実績の場合は自社がアピールするもので、事例はお客様が語ってくださる点。それさえ念頭においとけば、事例なのか実績なのか、口頭で話している言葉がどっちであっても迷わないと思います。あと、事例は、実際の提案現場だと色んな欲され方があって……。

編集部:欲され方?

関:言葉としてはやはり実績と事例が入り混じるんですけど、たとえば、これまでにない全く新しい商材を持ってきました!みたいな時には、「ところで事例あるの?」とお客様から必ずといっていいほど聞かれます。実績がなければご提案する際に説得力に欠けるっていうのは自分でもよくわかりますし、やっぱりそこは「xx社あります!」とか「〇〇社での事例があります」って自信を持って言いたいところです。

編集部:「これやったことあるんですか?」って聞かれたら答えづらいですもんね。

関:はい。あとは、意思決定者の方、決済権を持つ方が気にされるのはやはり安心材料。事例が沢山あれば安心ですよね。一方、現場の方が考えることとしては、実際の効果とか、あるいはリスクがないか、っていう点です。他にも、事例が公開されてると「事例があるってことは、世の中的にそれが標準レベルだよね」「じゃあ、それを超えるようなことをうちはやんなきゃいけないね」みたいな形で、対策や将来的な戦略を考えようっていうような非常に意識の高い方もいらっしゃいます。

で、事例の欲され方「あるある」ですけど、「同じ業種で同じ規模の事例がほしい」とリクエストいただくケースが圧倒的に多いですね。特に競合他社の事例です。
 

編集部:「うちと同じ業種、同じ規模の事例持ってきて」ってやつですね。でもユーザーの方の言いたいこともわかりますよね。やっぱり自分の会社の、シミュレーションみたいにしてみたいから、似てるほうがいいってことですもんね。

関:あと、お客様から「海外の事例は参考にならないから……」と言われることもありますが、同じ業種同じ規模で、しかも国内、って絞り込みすぎるよりも、DBに限って言うと、国内も海外も使い方って実は一緒で、海外事例の方が種類が豊富で参考になることが多かったりします。また、まったく想像しない使い方もあって、結構気付きを得られることもありますね。

編集部:海外事例を毛嫌いしないでね、ということですね。あの、話はちょっと戻りますが、先ほどの新しい商材の場合だと、事例はまだ出ていないので、商材をご紹介して敬遠されるってことあるんですか?

関:そうですね。実績がゼロの場合、「この商材はいいですよ」ってお客様に訴えたところで説得力がぜんぜんないですよね。「まだだれも使ってないの?」みたいな。「どこかで実績が出てればいいけど、一番手はさすがにね……」、ってお客様じゃなくても思いますよね。

編集部:どれも最初は実績ゼロなはずなのですが、なるほど。実績や事例が大事にされる理由が少しわかりました。ないとフィルターされてしまう、俎上にものらないみたいなことがありうると。

<事例を読むポイント>
実績・事例は主体の違い。実績は自社アピール、事例がお客様が語るもの。
実績・事例から安心、効果・リスク、業界標準を読み取ろう。
誰でも関心があるのは同じ属性を持つ事例。海外事例は、豊富な参考例や思いもよらない使い方の宝庫なので、実はお勧め。
 

実績アピールのしかたにはいろいろある

(資料:よくある実績アピール)
よくある実績アピール

関:私もよくやるんですが……(笑)。「導入実績500社!!」とか、あるいは顧客満足度90%以上、あとは主要取引先が書いてあったり、お客様のロゴをべたべた貼り付けたりとかっていうのがよくある実績アピールだと思いますが、実績アピールって、読み手の立場になった場合、そんなにこう、何だろう、ここから得られる情報ってあんまりない感じがしませんか?

編集部:そうですね。でもロゴがたくさん貼ってあると、「わぁ……こんなに実績があるんだ」みたいな、視覚的に訴えるところはあります。

関:実績からどう読み解けばいいんだろうって思ってるものがいくつかあるんですが、その一つが、時系列的な表記。「1000台突破!」とか謳っていたとしても、10年前1000台売れて今はゼロかもしれないってケースがあるのでは、って、深読みしてしまうことがあります(笑。

編集部:時系列がわからない……!たしかに、それはそうですね。

関:でも累計何台しか情報がなかったりすると、知りたいのは累計じゃなくってやっぱり自分の業種や会社で有用なのか、システム規模と合ってるかなんだよなーとか。

あと、プロジェクトの中には失敗プロジェクトっていうのがあるはずですよね。でも、実績の数字からは、失敗したのか成功したのか、その詳細が読み解けない。また、「DB100個作りました」みたいな表現もよく目にしますが、数の積み上げだけでは何をしたのか分からない。これと似たような話で、社数でカウントすると1社なんだけど、複数部署でたくさん導入されてたり、DBだと本番とかテストとかで採用するんで、本数でカウントしたほうが表記としてはインパクトあります。でもやはり実態が分からない。またロゴがわーっと並んでる中には、ひょっとしたら「テスト用に1万円分だけ買いました」みたいな実績が含まれているかもしれないですよね。
 
実績はそれをアピールしたい会社が主体となるので、表現には様々あるし、ベースがそろってないので、読み手としては読み解いたり何かを得ようというのは難しいです。
 

<事例を読むポイント>
実績から実態はわからない。より詳細な事実は事例を見てみよう。

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DB Online編集部(ディービーオンライン ヘンシュウブ)

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