IBMでは2年半ごとにメインフレームの新製品を提供
メインフレームの新製品の提供を続けているIBM。
「z12、13、14とほぼ2年半のペースで市場投入しています。基本的には5年前から新製品の計画を開始し、5年かけ1つの製品を完成させます。それを2年半ごとに出しているのです」―こう語るのは、日本IBM IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 サーバー・システム事業部 IBM z事業開発 部長の渡辺卓也氏だ。IBMではメインフレーム製品であるzの研究開発に、年間で500億円ほどを投資。メインフレームに新しいテクノロジーを投入している。開発する機能の優先順位は顧客の要望に添って決める。そのために顧客とともにワークショップを実施し、デザイン思考のアプローチによる共創も行っている。
「メインフレームで付き合いの長い顧客の声を、5年前から聞き新製品に取り入れています」と語るのはIBMシステムズ事業本部 IBM zテクニカル・セールス 統括部長の柿沼 健氏だ。
新しいテクノロジーはまず、メインフレームで今動いているアプリケーションの価値を上げるために利用される。また昨今のソフトウェア化により、世の中の最新のソリューションにも対応できるようにもしている。その結果、オープン系システムで利用されるJavaも動いている。また既に堅牢性、セキュリティ性などはかなり高いが、それを新しいテクノロジーでさらに高める努力も続けている。
これら新機能を十分に活用するにはCPU能力もより必要となるので、ハードウェアの性能向上にも取り組むことになる。顧客の新しいニーズに対応するためもあり、メインフレームのMIPS値は右肩上がりで上昇している。このように従来のアプリケーションの寿命を延ばすだけでなく、新たな用途が求められるからこそ、メインフレームは進化を続けているのだ。
最新のz14では、オープン系システムとの連携ニーズに応えるためもあり小型化、ラック化をしている。19インチラックに入るz14 ZR1を提供し、このモデルはラック内に空きスペースがあるためにそこにストレージを内蔵して、メインフレームのシステムを1ラックで提供できるようになった。このサイズとなったことで、顧客のデータセンター内でオープン系のマシンとの共存が容易になった。これはまさに5年前にデザイン思考で顧客とともに検討した結果でもある。この19インチラック化、つまりは小型化には苦労もあった。限られたスペースで必要な冷却性能を得るには、かなり無理をしなければならなかったという。
メインフレームの日本市場では、他にも大きな変化があった。かつては競合関係にあった日立との協業だ。2017年5月に日立が、IBM Zハードウェアをベースにその上で日立のOSを動かし、2018年にOEMとして提供すると発表したのだ。IBM以外のメインフレームハードウェアのベンダーは、新規機能の開発にはあまり積極的とは言えなかった。こういったところも、メインフレームがレガシーなシステムである印象を植え付けることに。一方でこの協業により、日立のメインフレームを利用していた顧客は、既存の日立のメインフレーム上に投入してきた資産を継承しながら、IBMのメインフレームが提供する最新技術も活用できるようになるというわけだ。