WatsonのAI技術を利用し、IBMはCognosブランドで真のセルフBIにフォーカス
Watson登場以降、データを活用する領域を「Watsonブランド」に統合化する動きがあったIBM。従来の一連のBI系ソリューションは、Watson Analyticsという名称でクラウドサービスとして提供されてきた。その中には、かつて同社が買収したBIツール「Cognos」や「SPSS」も含まれている。
一時期のIBMは、なんでもかんでもWatsonという感じだった。しかしどうやらそれを改め始めたようだ。一般ユーザー向けにAIを用いデータ分析を自動化するプラットフォームを、「Cognos Analytics」として新たに提供を始めたのだ。これとは別に主にデータサイエンティストが扱うデータ分析用プラットフォームは「Watson Studio」として提供している。ちなみにSPSSは、手動にも、ある程度の自動化にも対応できる「データサイエンティスト向けツール」と位置づけている。
そもそもCognosは、1969年にカナダで設立されたBIツールのベンダーだ。長い歴史があり、さまざまな業界のトップ企業に数多く採用されている。2008年にIBMが買収、IBM製品としての歴史も10年を超えた。IBMでは”Any Data”、”Anyone”、”Any AI”の「3つのAny」のコンセプトの下、アナリティクス・プラットフォームを提供している。Cognos Analyticsは、この中の主にAnyoneのコンセプトに基づく製品となる。
日本IBM IBMクラウド事業本部 アナリティクス事業部 Products & Solutions 統括部長の村角忠政氏は「Cognos Analyticsは、誰もがデータサイエンティストになれるようにするためのものです」と語る。IBMでは3つのAnyを実現するために、さまざまな製品の中にAIテクノロジーを取り込んできた。すでに主要なIBM製品には、100を超えるAI、自動化機能が搭載されている。AIを取り込むことで人が行うと複雑で手間のかかる処理を、かなりの部分まで自動化できるのだ。
Cognosは、いわゆるエンタープライズBIの世界を過去からずっと担ってきた。エンタープライズBIに加え、今では新たにセルフBIという考え方が出てきている。しかしながら、セルフBIとは言うもののユーザーにデータを自由に改ざんさせるのは、コンプライアンス上も問題がありまだ現実的ではない。「統制がとれた中でデータを見せるエンタープライズBIのニーズは、まだたくさんあります。そういったニーズがある中で、一般ユーザーがある程度データを加工し自ら使えるセルフBIが伸びている状況です」(村角氏)
現状のセルフBIには、さまざまな問題がある。セルフBIはまず10人、20人くらいの小規模の部門単位で導入することが多い。そこから利用部門が広がるのだが、部門ごとに使い方もバラバラでガバナンスも効きにくい環境が生まれてしまう。さらに使う人にレベル差があり、セルフBIを入れたものの思ったような効果を発揮できない部署も出てくる。こういった問題に対処するために、セルフで使えるより使いやすさとエンタープライズ用途に対応できるガバナンス機能という2つニーズを満たすBIが、必要となっているのだ。
2018年11月23日にリリースした「Cognos Analytics v11.1」は、この2つのニーズを満たすものだという。AIを使うことで、データの準備と分析の自動化を実現している。この新しいバージョンでは、データを自動で加工しモデリングも自動で行う。分析のためにアップロードしたデータの内容を、Cognos Analyticsが判断し相関関係などを自動で解析、可視化の方法や分析手法も自動で選定してくれる。「データ分析では、データの整備に8割の時間がかかると言われています。そのデータの前処理部分を、Cognos Analyticsはデータをアップロードするだけで自動でやってくれるのです」(村角氏)