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アメリカ全判例のデータベースが新たに登場

edited by Security Online   2019/03/06 06:00

CAPの利用方法1.登録せずにできること

 CAPのサイトを訪れればすぐにわかるように、情報へのアクセス形式としては、APIによる方法とBulkで一括ダウンロードする方法が用意されている。ここでは、いわゆる判例検索、個別の判例の判決文を読む場合を想定して、APIでのアクセスを試してみよう。なお、APIは日本の総務省統計局も採用しているデータ取得の機能で、CAPではAPI未経験者でも情報を取得できる工夫がされているし、またBeginner's Introduction to APIsというサポート記事も掲載されている。

 それでは、CAPトップページのDIVE inから「API」(もしくは、ヘッダの右側の四角形でナビゲーションを展開させて、「CASELAW」から「API」)をクリックして、APIのページ<https://case.law/api/>に進もう。

 表示されたたくさんの項目の中でまず理解しておきたいのは、Access Limits(利用限度)だ。ユーザを未登録者・登録者・研究者・商用者4つに分け、それぞれが可能な利用内容が記載されている。CAPで何ができるのかをここで把握しておこう。

 もっとも判りやすいのが研究者で、このステイタスではすべての情報が自由に利用できる。また、商用者の場合には、相応な経済的負担と義務のもとですべての情報を利用することができるようだ(詳細はRavel Lawへの問合せが必要)。

 そして、これら以外の一般の利用者については登録の有無でステイタスが分かれるのであるが、未登録者のままできるのは、すべての判例のメタデータとホワイトリストの判例全文へのアクセスだ。ここでホワイトリスト https://case.law/api/#Glossaryというのは、判例情報を2次利用しやすい形式で提供していると認められた裁判所のリストで、現在のところ、イリノイとアーカンソーが該当している。ということは、CAPサイトにアクセスしさえすれば、アメリカの全判例の当事者・判決日・判例番号等のメタデータを知ること、加えて、イリノイとアーカンソーについては全判決文を取得することができるということになる。

 ゆえに、APIのページ<https://case.law/api/>のサンプルURL(下記)をためしにクリックしてみると、誰もがイリノイ州の可読形式の全判例183,149件(2019年3月現在)にアクセスできる。

Text Format (default)
https://api.case.law/v1/cases/?jurisdiction=ill&full_case=true

 上記URLの文字列を見ると判るように、「ill」がイリノイ州、「full_case=true」が判例文全文表示可能を意味するから、「ill」を「ark」置き換えれば、同じくホワイトリストのアーカンソーの全59,668件が全文表示されることになる。なお、デフォルトでは検索結果がテキスト・フォーマットで100件ごと表示され、ページの行き来は左上の青いボタンで行う。

CAPの利用方法2.登録すればできること

 次に、検索対象がイリノイ・アーカンソー以外の州または連邦の判例の場合(ノン・ホワイトリスト)、判決文全文にアクセスするには登録者になることが求められる。といっても、氏名・メールアドレスと8文字以上のパスワードを設定するだけの簡単な手続である。先のAPIのページ<https://case.law/api/>に戻って、RegistrationからAPIキーを割り当ててもらうための登録を行う。登録者になると、1日500件までのノン・ホワイトリストの判例の全文にアクセスすることが可能になる旨がAccess Limitsに記載されている。

 登録が終わってログインしたら、さっそく何か判決文を見てみたい。いったんログインすれば、登録前にはできなかった全文表示が自動的に可能になり、その閲覧件数はヘッダのACCOUNTからUser Detailsでいつでも確認できる(ただし、確認してブラウザの機能で戻って判例全文を再度表示させると、これで本日の残り閲覧数(Cases left to view today)が1カウントされてしまう模様。)。

 ここではサンプルとして、いわゆるミランダ事件の判決を見つけてみることにする(この事件は、刑事が容疑者に手錠をかけながら「おまえには黙秘権がある…」云々の告知をする、ハリウッド映画でもおなじみのミランダ警告の契機となった古典的判決。)。

 ここで必要になるのは、判決を特定できるだけの情報だ。ためしにミランダ+判例でグーグル検索すると、日本語版ウィキペディアでも「Miranda v. Arizona (384 U.S. 436 (1966))」と冒頭に表示されているのが見つかる。これで、ミランダ対アリゾナ事件が1966年の連邦最高裁の判例集The United States Reports384巻436ページに掲載されていることが判るようになっている。もちろん、Miranda、Arizona、1966など単語で絞込み検索することもできるが、掲載書籍(サイテイション)が判れば、もっとも確実に該当判例にアクセスできるから、今回はこの情報を使ってしまおう。

 では、再度、APIのページ<https://case.law/api/>からGetting Started「Browse the API」をクリックしてApi Rootページ<https://api.case.law/v1/>を開こう。ブレイス冒頭の「"cases": "https://api.case.law/v1/cases/",」からCase Listページ< https://api.case.law/v1/cases/>に進むと、そこには現状660万件ほどの判例のメタデータが表示されている("count": 6606268)。

 次に、右上の「Filtes」から「Field filters」をポップアップさせて、「Citation:」欄に先に調べたミランダ判決の「384 U.S. 436」を入力する。

 次に、「Field filters」最下部の2つの枠にラジオボタンで選択する。この2か所の指示が選択されていないとメタデータしか表示されないので、判決文を閲読可能な形式で表示させるために下記の選択を表示させよう。

  • Include Full Case Text Or Just Metadata? (Full Case Text を選択)
  • Format For Case Text (Applies Only If Including Case Text) (Text only(default) を選択)

 最後にSubmitで実行をかけると、ミランダ事件の判決が表示されることになる("opinions"の"majority"部分)。

 なお、先のミランダ+判決で探した日本語版ウィキペディアからも実はJustiaの判決文にリンクが張られているから、この著名な判例については表示形式の比較をすることもできる。


著者プロフィール

  • 青木モリヤ(アオキモリヤ)

    リーガルリサーチャ http://www.itlaw.tokyo/ 一般企業勤務後、法律事務所でリーガル・リサーチを担当。 法律の解釈とともにメタデータ管理に関心を持ち、各方面で活動中。

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