レガシーシステムが抱える課題やリスクには抜本的な解決が必要だ
経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーションレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」では、現状のITシステムが抱える課題やリスクが多く指摘されている。「2025年問題」とは、団塊の世代が後期高齢者となり日本が未曽有の高齢化社会になることを指す。また、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査によると、国内企業の約8割がレガシーシステムを抱えており、IT予算の多くが維持や運営に割り当てられている。維持や運営がIT予算の9割を占める企業は実に4割を超える。これだけ維持や運営にかかると、新しい取り組みを始めようにも始められない。
人材活用にも問題がある。ただでさえ不足しているIT人材がレガシーシステムの保守や運用にかかりきりになっている。なかには保守や運用が属人的となり「継承が困難」と考える事業者は6割を超える。
多くの企業でレガシーシステムが足かせとなり、デジタルトランスフォーメーションなど新しい取り組みを阻んでいる。
ITシステムに目を向けると、日本は品質の高さには定評があるが、今までに存在しない全く新しい製品やサービスを生み出すことは得意ではない。そして今、日本は少子高齢化が急速に進み、生産人口減少に伴う人手不足が深刻だ。レガシーシステムの保守は属人的なところがあり、熟練技術者の引退に伴い暗黙知が継承されないことが問題となっている。
さらにITシステムは非構造化データやIoTデータの活用でデータボリュームは爆発的に増加している。管理当局の規制強化もあり、やるべきことは山積している。そうするとしわ寄せは現場の人間に及ぶ。見逃しの増加やみなし検査などの意図的な省略が起こり、いろいろな問題を引き起こしている。佐藤氏は「これ以上の先送りはやめて、抜本的な解決が必要では?」と問題提起する。
全て刷新するのは無理がある、バイモーダルで両立するには何が必要か
もう少し日本におけるITシステムを深く分析していこう。個々のシステムは緻密で品質も高い。これは部分最適が進んでいるということだ。システム全体で見ると分断(サイロ化)しており、システム間のギャップは見えない形で人手によりカバーされている。
かつて技術が追いつかず、人手でやったほうがコストパフォーマンスが良いものもあった。今でも当時のシステム化の範囲がそのまま温存されている。そのため佐藤氏は「IT化で自動化を推進する余地が多分にある」と指摘する。昨今では機械学習やRPAでシステム化できる技術が進化しており、かつて諦めていたシステム化が今なら実現可能だ。またITと人的リソースのコストパフォーマンスが逆転し、ITでやるほうがコストパフォーマンス的にメリットがあるケースも多々あるだろう。
先述したようなレガシーシステムの維持と保守という問題で考えてみよう。レガシーシステムを作り替えるとしてもリスクや工数でなかなかメリットを見いだしにくい。例えば大昔にCOBOLで作ったものをJavaで新たに作り替えるとなると、どれだけのコストがかかるだろうか。そこにどれだけメリットがあるだろうか。もちろん、COBOLをJavaに自動変換するツールやその実行テストを支援するツール等の発達で書き換えのコストは軽減されるようになってきているが、それでも人手をかける作業をゼロにすることはできない。
発想を変えてみよう。レガシーシステムのコアとなる部分はそのまま塩漬けにする方法もある。外部連携に必要な部分だけAPI化して温存すればいい。新しいビジネスで提供する仕組みは新しいシステムで構築し、レガシーシステムが必要な部分はレガシーシステムを呼び出せばいい。新しいシステムではできる限り最新技術を用いるようにする。
これはバイモーダルの考え方に通じる。レガシーシステムなどのモード1では安定性や信頼性が重要で、効率化や省力化を進めていく必要がある。一方、デジタルトランスフォーメーションなどのモード2では、迅速なイノベーションを継続的に進めていく必要がある。これらを両立させ、連携させることがこれからのITに欠かせない。
人手不足の有効打となるのがRPAだ。それでもまだカバーできないところはAI活用などで自動判断できるようなシステム自動化を進めていく。「そこにはシステム間のインターオペラビリティが重要になる」と佐藤氏は指摘する。
ITシステムが抱える構造的な問題にはサイロ化がある。個々のシステムが高度に最適化しており、利活用したいデータが分断している。データが分断していると、戦略的な意思決定は難しくなる。そこで主要なデータはできるだけ集約することがソリューションの鍵となる。
理想としては、データは流動的で必要な時に必要な形で取り出せるといい。アプリケーション、システム、デバイスにあるさまざまな形式のデータがどこかに集約されており、どのデータでも必要な時に好きな形で取り出せるようにする。蛇口をひねれば、ほしい飲み物が出てくるようなイメージだ。そうすれば正しいデータ、人、時間、量から、正しい理解や正しい行動を導き出せる。
データの流動性を担保する鍵となるのがAPIだ。必要とするデータを使いやすい形で提供する。APIを用いてRESTやJSONベースでデータを交換する。マイクロサービスアーキテクチャだ。Microsoft OfficeのExcelもREST APIが使えるため、使い慣れたExcelとも連携できる。もちろん今流行のRPAとも連携できる。いまインターオペラビリティはここまで進化している。
「少し脱線しますが」と佐藤氏が挙げるのが最近のITでよく聞く「Software Defined ~」だ。SDN(Software Defined Network)、SDS(Software Defined Storage)、あるいはSDS(Software Defined Software)。最後のはDockerなどを表す。佐藤氏は「これらはプログラミングでさまざまなものを定義していくというトレンドです。これは自動化を推進するための不可欠な要素です」と指摘する。
相互運用性の高さとデータの流動性を担保するInterSystems IRISデータプラットフォーム
実際にこうした自動化やシステム間連携を実現できるのがInterSystems IRISデータプラットフォームだ。佐藤氏は「InterSystems IRISデータプラットフォームはデジタルトランスフォーメーションを加速する統合データプラットフォームです」と説明する。
対応しているデータモデルはリレーショナル、ドキュメント、多次元、オブジェクトと幅広い。あらゆるデータに対してSQLアクセスを可能とする。ほかにもAIモデルランタイム、ビジネスインテリジェンス、Apache Sparkコネクタ、自然言語処理など、革新的かつ強力な分析技術を取りそろえている。
いわゆる「HTAP(ハイブリッド型のトランザクションとアナリティクス処理)」も実現できるプラットフォームとなる。株式市場やIoTデータ処理も可能なほどの高速なトランザクション性能を持ちつつ、データのリアルタイム分析も可能だ。ビッグデータアプリケーションには理想的なプラットフォームとなる。
相互接続性も強く、バイモーダルの実現には欠かせない。既存のデータからアプリケーションまで幅広く統合し、ビジネスプロセスのオーケストレーションも可能とする。既存のシステム資産を活かすことができる。これはこれまでのシステム投資を廃棄することなく、継続して活用できるということになる。
佐藤氏はまとめとしてこう締めくくった。「デジタルトランスフォーメーションを進めていくには、徹底的な自動化を推進していく必要があります。そのためには相互運用性が重要な柱となり、データの流動性が欠かせません。相互運用性とデータ流動性を担保できる戦略的IT基盤となるのがInterSystems IRISデータプラットフォームです」。