
テクノロジーによりビジネスモデルが大きく変化し、ユーザーにとって価値のあるサービスの提供が多くの企業にとって喫緊の課題となっています。それらは単一の組織で解決することは難しく、時には部門はもちろん企業の壁すらも超え、新たな事業開発に取り組まなければなりません。そういった事業をうまく進めるため、あらゆる組織を横串でインテグレートするキーマン「BizDev」について、フリーランスBizDev/Technologist 佐野和哉さんが解説します。<前編>
BizDevって何?
BizDevとは"Business Development"の略です。この1語で「職業分野」と「職業そのもの」をそれぞれ指します。営業活動をする人を営業と呼ぶのと同様、Business Developmentという分野の仕事をに従事する人をBizDev = Business Developmentと呼びます。
BizDevという職業とは何をする人なのか
米ブログプラットフォームの「medium」に2015年3月に書かれた記事”Doing Biz Dev”には、以下のようにBizDevという仕事について書かれています。当時すでにスタートアップ界隈で使われていた言葉でありながらも、このように新たに定義が必要な職業でした。
【原文】
●What Biz Dev Does
- Make Growth Happen
- Test the Market
- Evangelize for the Customers
- Build the Network
【訳】
●BizDevのやること
・グロース(サービスの成長)を引き起こす
・マーケット(市場)を試す
・お客さんに布教する
・ネットワークを築く
【原文】
●Skills to Build
- Be a Human Lie Detector
- Never Eat Alone
- Make them Meet with You
- Get Deals Done
- Play Nice with Others
【訳】
●持つべきスキル
・ウソ発見器になれ
・ひとりでメシを食うな(アメリカで流行ったビジネス書のタイトル)
・人が会ってくれるようになれ
・取引を決めろ
・他人にナイスに振る舞え
なぜBizDevが取り沙汰されるようになったのか
2010年代、そもそも事業開発の進め方自体がで大きく確立してきたという背景があります。シリアルアントレプレナーのエリック・リース氏によって提唱された、新規事業の立ち上げに関する方法論「リーン・スタートアップ」を用いて説明します。
リーン・スタートアップとは、ユーザー(顧客)に対して提供できる最大の価値が見極められるまで、「仮説の構築→計測→学習」というサイクルを、市場の反応を見ながら改善を素早く小回りに繰り返し続けることを提唱したものです。目まぐるしいスピードで変化するビジネスにおいて、顧客のニーズ予測に時間を費やして事業を起こしても、市場が変化してしまいプロジェクトそのものが頓挫してしまう可能性があります。
具体的には、新規の製品・サービスを必要としている顧客ニーズの仮説を立て、新規事業アイデアの原型を低コストかつスピーディーに開発(仮説の構築)。次に、情報感度の高いユーザーに提供しその反応を見ます(計測)。そして、その反応を見たうえでより多くの顧客ニーズに応えられるよう改善を重ねます(学習)。これらを短いサイクルで回し、仮説そのものが誤っていた場合はダメージを最小限に抑えて事業の方向を転換するというものです。
こうした、「リーン・スタートアップのノウハウをわかりながらサイクルをひたすら回す」という職業そのものは従来なかったものです。これらは「社長」や「事業部長」、「リーダー」といった役職者がやる仕事の一部ではあったものの、職名にはなっていませんでした。そこで出てきたのがBizDevではないかと考えられます。
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佐野和哉(サノカズヤ)
1991年北海道遠軽町生まれ。新卒で大手広告代理店にて営業として勤務した後、岐阜県立情報科学芸術大学院大学(IAMAS)に進学し、地域コミュニティとウェブメディアに関する研究を行う。修了後は株式会社QUANTUMにて大企業の新規事業企画に携わり、現在はフリーランスのBizDev/Technologistとして、主に地域コミュニティや新しい技術が絡む領域の企画やプロジェクトマネジメントを行う。
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