プロジェクトの全てを見る「BizDev」という役割
――はじめに、お2人のお立場などを教えてください。
小野さん(以下敬称略):私は1999年に新卒でNTTドコモに入り、約14年間海外投資や経営企画、IRといった業務に携わりました。その後、サービスや事業の企画開発をやりたかったので30代半ばにAmazon Japanに入り、シニアプロダクトマネージャーとしてAmazon Studentの立ち上げや書籍事業の運営などを約3年行った後5年前にBizDev部門の立ち上げのためにメルカリに入社し、現在に至ります。
佐野さん(以下敬称略):私は新卒で広告代理店の営業として働き、一旦会社を辞めて大学院に行きました。卒業後にQUANTAMという新規事業を推進する会社でBizDevとして働き、現在はフリーランスのBizDevとして、関わりのある企業や友人のビジネスを手伝っています。
手伝っている仕事は、例えば新規事業の企画からやることもあれば、ある程度段階が進みクライアントワークに近いものもあります。また、立ち上げから順調に走らせていくところまでプロジェクトマネージャー形式で携わるなど様々な関わり方をします。以前BizDevについて記事を書いた時に調べたのですが、日本ではこれといった厳密な定義はされていないですよね。
小野:そうですね。BizDevという概念は日本ではまだそれほど歴史が長くはないのではないでしょうか。試しに、求人サイトで「BizDev」を検索すると、業界によって全く違う職務内容が出てきます。例えばメーカーなら量販店などのチャネル開拓だったり、製薬会社の場合は、セールスに近いものだったりと幅広い。
メルカリにおけるBizDevはセールスではありません。戦略アライアンスの締結と、そのプロジェクトマネジメントを担当する部門です。 アイディア創発を含めたビジネス開発の上流工程に始まり、プロダクトの開発、さらにはその、ローンチ後のOps設計と支援にも関わります。プロジェクトの全体を見るということです。「何でもやる」と言うとあまり響きは良くないんですけど、上流から下流までバリューチェーンすべてを横串で見るようなイメージです。
――実際に小野さんの携わったプロジェクトはどのようなものがありますか?
小野:私がメルカリに入社した2014年当時は、物流と決済という、重要な2つの柱に大きな改善の余地がありました。。なので、まずは物流と決済の両方に取り掛かりました。物流はヤマト運輸様と日本郵便様とアライアンスを組み、統合型物流サービス「メルカリ便」シリーズを作りました。決済に関してはキャリア決済のほかに、CtoCに間口を開いてなかったクレジットカード会社のJCB様や、コンビニ決済のセブンイレブン様とパートナーシップを組み、決済手段を拡充したり。所謂エスタブリッシュな大企業と提携してサービス・機能開発を推進するプロジェクトが多いですね。
佐野:それらのプロジェクトの中でBizDevとしてはどのように動かれていたんですか。
小野:そうですね。まず社内で「こういう物があればいいよね」という話が生まれますよね。その時、「お客様にとっての不親切な事とその対処法も分かっているものの、会社の中のリソースではどうしてもできない」という状況があったとしたら、どのパートナー様とどういう座組を組み、にどのような経済条件にするか、ビジネス企画の段階ですべて詰めます。そこから事業提携交渉し、契約を締結し、そのあとの開発フェーズにもサポートとして入ります。というのも、大企業とメルカリのようなスタートアップでは、開発の手法も考え方も全く違うのでズレが生じるんですよね。そこをうまく調整したり、といった動きをします。本当にいろんなことをやっていますね。