組織より個人の立ち振る舞いが重要となる
佐野さん(以下敬称略):「BizDevってコンサルみたいなもの?」とよく聞かれるんですけど、そういう意味ではBizDevって説明しづらさもありますよね。私は「プロマネとかコンサルに近い」と説明しているんですが、小野さんはいかがですか。
小野さん(以下敬称略):佐野さんの記事の中で「BizDevはプロマネの度合いの高い営業職」と書かれているのを見て確かにと思いました。プロマネが開発側になるのか、ビジネス側になるのかというのは、物によって全然違うと思いますが、イメージはすごく近いですよね。
コンサルとの類似点でいうと、スキルセット・マインドセットは近いかもしれないですね。マインドセットは、先ほど申し上げた通り、独立した個としての意識が強くあるべきだと。そうすれば組織の中でも外でも、自らが自由に泳いで、アウトプットをで出し続ける事ができると思っています。ただ事業会社の中の方が、コンサルティングよりもコミットメントする割合が大きい分、面白く動ける気はしますね。
佐野:確かに、サービスとか事業とかをクリエイトする部分に特化して動くという意味なら、コンサルとは違う活躍もできますね。資料作って終わりじゃなくて、その先のコミュニケーションもやって、と。
小野:ですね。僕たちの仕事は自ら絵に描いた餅を現実に作って提供すること。まずは絵を創造して、じゃあこの餅を作るにはどのお米が良いのか考えてお米を手に入れる。なければお米から自分で作るところからやって、餅にするという。そこで終わりじゃなくて、どの炭火で焼いたら1番おいしいかなっていうのをマーケットに出して様子を見ながら調整する。良い炭がなければまたそれも自分で作る――という感じです。
――そういったことを上手く回すスキルを身につけるためにはどうすればいいと思いますか。
小野:BizDevとはこうだという限定的なものではなくて、いろんなスタイルがある。セールスでもファイナンスでも経営企画でも開発でもなんでも良いのですが、「これは自分の得意技だ!」というスキルがある上で、その幅を広げていくことが重要ですね。スキルって経験と一緒に積み上がって来るから。私の場合、大企業時代は必ずしもやりたいことをやれる環境ではなかったんですが、眼の前の仕事に集中していった結果、複数のスキルが積み上がり、現在BizDevとして活きていると思います。もちろん、「やりたくない事は、やらなくてもいい」という考え方もありますし、それはそれで正解な気もします。ただ、それはせっかくの成長機会を逃してしまう気もするので勿体無いと思うんですよ。なんでもいいから自分が目の前にあることを、そこに思いを込めてやれば自分のキャリアやスキルになるんじゃないかと。
佐野:私も広告代理店で商品開発やクリエイティブに携わりたかったんですけど、コミュニケーションが得意な訳じゃないのに営業になったんですよね。当時かなり厳しく鍛えられましたが、そういう環境があったからこそ大企業の動く理論がすごく身についた。会社を辞めて、クリエイティブ方面の大学院にも行って作り手の考え方や自分で手を動かす事も知りました。どちらの経験も今に活きていると思うので、すごく分かります。
小野:ありますよね。これまで積み重ねたものの結果でBizDevをやっているという気がします。事業開発というと広義なんですけど、IT業界のBizDevという意味ではコードじゃないやり方で、インターネットビジネスを作るのが今の立ち位置です。なので業界が違ってもBizDevの方法論としては一緒かなと。
佐野:私も仕事のほかに地元の北海道で民泊を始めました。取り敢えず始めてみながら運用を回していくやり方は、事業規模に関係なくBizDevの基本的な流れと一緒だと思っています。
小野:確かに、そんな気がしますね。よく交渉とかコミュニケーションといった部分だけが目立つようなのですが、実際はそれだけではない。手段として交渉事をするけど、プロジェクト全体の戦略観に精通していないと結果は出せないですね。