監査業務はまだ全てがデジタル化、自動化できていない
「監査の基本的な手法は、監査法人の創業時代からあまり変わっていません」と話すのはPwCあらた有限責任監査法人 パートナー/監査業務変革推進部長 久保田正崇氏。PwCのルーツにあたるウィリアム・クーパー氏やエドウィン・ウオーターハウス氏らの会計事務所の創業は約150年前。日本なら明治になる手前ごろだ。
デジタル化にも対応しつつ脈々と続いてきた会計監査だが、AIが本格的に普及すると「会計監査業務はAIに取って代わられる」と考えられている。監査が行う多くが照合や分析で、比較的AIが得意な分野だからだ。AIで処理ができれば監査の生産性が大きく向上するのは間違いない。
現状はどうか。今や多くの企業や組織には会計システムや販売管理システムが導入されており、監査に使う主なデータはインプット段階からデジタル化できている。また最終的に残す調書や報告書もデジタル化されている。
始まりと終わりはデジタルだ。しかし途中にアナログ処理がまだ残る。久保田氏によると、現状では段ボールの中から証憑(請求書や領収書などの書類)を探す、紙面とExcelデータを目検で照合する、といった地道な作業があるという。体力も時間も要する過酷な作業でもある。
また現時点ではデータ形式やシステムの接続性でAI自動化には壁がある。特にAIで処理をするにはAIで処理可能なデータ形式に変換する必要がある。