米PTCは6月10日から6月13日までの4日間、米国マサチューセッツ州ボストンにおいて、年次プライベートコンファレンス「LiveWorx 2019」を開催した。近年、PTCは「デジタルとフィジカルの融合による、製造現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性」を訴えている。今回のコンファレンスでも、IoT(Internet of Things)やAR(拡張現実)、VR(仮想現実)、3Dプリンターといった最新技術を導入し、実際にDXに取り組んでいる同社の顧客事例を多数紹介。中でもARを「製造現場が抱える熟練者の技術伝承の課題を解決するソリューション」と位置づけ、「製造業には必須となる技術」(PTC幹部)だとアピールした。
「デジタルツイン」と「デジタルスレッド」で生産性が飛躍的に向上

6500人超が参加した
「過去を振り返ると、機械化へのトランスフォームは、人間の肉体的な労働負担を軽減した。コンピュータの登場は、頭脳労働の負担を軽減した。では、DXで人間が享受するメリットは何か。それは、人間の潜在的なエネルギーの効率的な活用だ。デジタルとフィジカルがIoTを介して融合すると、『デジタルスレッド』や『デジタルツイン』が実現する。これにより人間は、物理的なマシンの稼働状況をデジタル上で監視/制御/最適化できる。製造現場の生産性は、飛躍的に向上するのだ」
6月11日の基調講演で登壇した米PTCプレジデント兼最高経営責任者(CEO)を務めるジェームズ E.ヘプルマン(James E. Heppelmann)氏は、約6000人の聴衆にこう訴えた。

ジェームズ E.ヘプルマン(James E. Heppelmann)氏
PTCは3D CADの「Creo」や製品ライフサイクル管理(PLM)の「Windchill」といった製造業向けソリューションを主軸とし、製造現場を支えてきた。こうした製品とIoTやAR、VRなどの最新技術を組み合わせることで、製造業のDXが実現するというのが、今回のキーメッセージである。
「例えば3D CADのデータを活用し、その部品がマシンのどの部分に組み込まれるのかをAR技術で把握する。そして、IoTプラットフォームを介し、PLMから部品の詳細情報を取り出す。『デジタルスレッド』で、部品設計の上流工程から利用状況までをつなげば、どの工程においても最新の情報が取得できる」(ヘプルマン氏)

ARといった最新技術と組合せる必要がある
「デジタルスレッド」とは、設計や製造、保守/サービスといった製品ライフサイクル全体をデジタル化し、共通プラットフォームやネットワークで情報とプロセスを管理する仕組みを指す。データをスレッド(糸)のようにつなげることで、上流工程で作成したデータを下流で活用できるのか特徴だ。一方、「デジタルツイン」とは、IoTで取得したリアルタイムデータを活用し、物理世界の製品やシステムで発生していることをデジタル上で忠実に再現することを指す。
「デジタルスレッド」と「デジタルツイン」を活用してDXを実現するためには、CADやPLMといった製品設計/製品ライフサイクル全体を支える情報と、IoTプラットフォームを介したリアルタイムでのデータ連携が必須となる。ヘプルマン氏は、「PLMはデジタルスレッドの基盤であり、PLMなしでは3D CADはスケールに機能できない」と力説する。PLMからVR/ARといったソリューションまでを一気通貫で提供できるのが、PTCの強みであるというわけだ。

「デジタルツイン」を実現する
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鈴木恭子(スズキキョウコ)
ITジャーナリスト。
週刊誌記者などを経て、2001年IDGジャパンに入社しWindows Server World、Computerworldを担当。2013年6月にITジャーナリストとして独立した。主な専門分野はIoTとセキュリティ。当面の目標はOWSイベントで泳ぐこと。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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