PTCは2015年に米Qualcommの子会社から「Vuforia」事業を買収。PTCのIoT(Internet of Things)プラットフォームである「ThingWorx」と組み合わせ、製造業に特化したARソリューションを提供している。同社でAR製品担当 エクゼクティブ バイスプレジデントを務めるマイク キャンベル(Mike Campbell)氏は、「われわれは、製造分野におけるARソリューションのリーディングカンパニーだ」と胸を張る。
日本の製造業はAR技術を「労働人口減少に伴う作業効率化のソリューション」と捉える向きがある。とはいえ、人手不足が深刻な製造現場がARを導入するまでには、克服すべき課題も多い。今後、PTCはARをどのように浸透させていくのか。LiveWorx 2019でキャンベル氏は日本メディアのグループインタビューに応じ、その戦略を語った。
―― AR/IoT部門の売上げがPTCの売上げ全体の30%を占めた。好調の要因は何だと考えるか。
キャンベル氏 2015年に「Vuforia」を買収した当初、AR/IoT関連の売上げは200万ドル程度だったが、現在は3000万ドル規模に成長した。成長率は年率平均80%と好調だ。今後の成長率も二桁後半を狙っていく。
好調の要因は、PTCのAR事業が市場の中で差別化ができているからだと考えている。PTCが持つ(製品ライフサイクルや3D CADといった)ソリューションと組み合わせることで、「デジタルツイン」「デジタルスレッド」を実現し、製造業に対する価値の創出を支援している。
―― AR導入にあたり、ROI(投資利益率)はどのように定義すべきか。
キャンベル氏 ROIが達成しやすい領域は、「サービス」「製造」「トレーニング」だ。そこで創出される付加価値は、「生産性向上」「品質向上」「コンプライアンス遵守」だと考えている。
具体的には、正確な情報を適切なタイミングで必要な現場に提供することで、生産現場の無駄を省くことが可能だ。これにより、廃棄品の削減や手戻りの発生を減らすことができる。さらに、(ARによってベストプラクティスを標準化することで)正確な情報の共有と、正しい操作が徹底される。コンプライアンス遵守の観点からも、企業が得られるメリットは大きい。
―― ARソリューションである「Vuforia」の機能強化と、その方向性について教えてほしい。LiveWorx 2019期間中に、オランダTWNKLSの買収を発表した。その意図は何か。
キャンベル氏 TWNKLSの従業員は25~30人だが、10年以上にわたりAR関連の事業を手掛けてきた。同社の顧客企業には、スウェーデンのIKEAやイタリアのLamborghiniが名を連ねている。例えばIKEAは、製品カタログにTWNKLSの技術を活用し、実際の家具が3Dで見られるようにしている。こうした技術は、PTCのAR事業を強化し、顧客がARを活用してビジネス価値を創出するまでの時間を大幅に短縮させられるものだ。
また、「Vuforia」の機能強化としては「堅牢性」に焦点を当て、コンピュータビジョンの機能拡張で使いやすさを追求していく。例えば、同じ操作を繰り返させないといった操作性や、明度が十分でない環境でも利用できるようにするといった具合だ。また、オブジェクト認知をした後に、すぐにトラッキングできるといったことも改善をしていく。
―― 「Vuforia」の競合となる製品はあるのか。