リテール業の需要予測における課題
河野氏は、リテール業向けの需要予測の成功事例から、有効であった施策を紹介した。具体的には「客数予測→販売数予測」「変数の大量投入」「価格弾力性」「予測モデルのハイブリッド化」「在庫切れ対応」「季節性商品」「異常データ除外」「ロス率の考慮」となる。リテール業では販売予測の前段として、客数予測(レジの回数)を行う。ここをしっかりと予測することで全体の予測精度の底上げができる。この部分も、SASが知見を蓄積しているとした。
変数の大量投入では、一般的に80から90の説明変数をお客様にご用意いただいている。変数は、価格系、店舗イベント・企画系、カレンダー系、競合要因系、周辺地区要因系、天気系などに分類することができ、さらに大きく内部要因系と外部要因系に分けることができる。客数予測では、日別で誤差率5%程度の非常に高い数値を実現しており、さらに時間帯別で予測することでレジ打ちパート人員の最適化に落とすことも可能であるとした。
客数予測では、大雪などのイレギュラーな要因もある。一般的に大雪の前日は来客数が増え、当日は下がるが、これも様々なテクニックを駆使することで前日の立ち上がりと当日の落ち込みを予測できる。また、リテールでは特売やキャンペーンなどの施策により、通常時は販売数が20~30個の商品が200~400個、あるいは1000個レベルまで売れることがある。この予測は非常に難しく、非線形回帰モデルではうまく予測できないと河野氏は指摘する。
そこでSASでは、段階的な予測を行っていく。最初の段階では、自己回帰的な時系列モデルで算出した。ほぼ動きは追えているが、平常時の販売数が上振れ傾向にある。そこで次に層別予測という、層に分けて予測する手法を適用した。これにより平常時の上振れが解消されるが、急激な販売数の突き上げは追い切れておらず、累積値に差が出ている。第3段階としてイベント効果考慮モデルを追加すると、ほぼ完全な予測となった。
河野氏は、季節性・間欠性への季節性変数の投入、在庫切れ発生時のデータを除去することによる対応、値付けや棚割(売り方)の変化を下降トレンドと解釈しないことによる対応、近隣で花火大会があって特定の商品が急激に売れた際の対応、見切り品の賢い売り方のための予測などを詳しく説明した。
SASのリテール業向けサービス
最後に河野氏は、SASがリテール業向けに提供している「需要予測 クイックPoC」サービスについて紹介した。これは、短期間・低費用で実施可能な予測算出・精度検証サービスで、SASが過去、主に日本のお客様向けに行ってきた需要予測プロジェクトからの知見が蓄積・反映された予測モデルを使用する。サービスでは、まずお客様に販売実績やイベント情報、販促情報など80~90のデータを準備していただき、それを元にSASが需要予測を行う。