非競争領域にはリファレンスアーキテクチャで効率化 その先には
リファレンスアーキテクチャとはいわば教科書や見本となるもので、無償提供される。必要な機能がどのくらいあり、どのように連携するのかを示した「機能マップ」と、必要な機能がMicrosoftの製品やサービスではどれに相当するのかを示した「アーキテクチャマップ」がある。対象となるのはユーザー認証、サービス連携、データ管理や分析などの領域だ。加えて試作品となる「実装サンプル」も提供される。
リファレンスアーキテクチャとサンプルがあることにより、MaaSサービス事業者はシステム構築期間の短縮、開発・運用・保守コストの削減が期待できる。また共通機能部分にかかる労力やコストを減らすことができるため、差別化領域や競争領域に注力できるメリットもある。
実装サンプルはMaaSサービスにユースケースを組み合わせたものとなる。具体的にはビジネスワーカー向けのアプリで、スケジュール管理や経路検索などを組み合わせ、働き方の効率化を実現することを目的としている。場所や時間で柔軟な働き方が求められると、移動は効率化実現の重要な要素となる。もしヘルシンキのように交通手段の手段が広く定額制であれば、より効率的な手段を選ぶほうがいい。将来必要なアプリとして現実味がある。
先述したように、ほかにもマイクロソフトからのMaaS参入事業者への支援がある。新規ビジネス開発支援と技術者育成プログラムはともに人材育成プログラムだ。前者は新しいビジネスモデルを創造できる人材を育成するためのもので、創造性や発想力を高める。2019年7月から開始した「Flags!」の一環として提供され、MaaS実現のための実践的な内容を盛り込む。後者は従来からあるAzureの技術者育成プログラムにMaaS独自の講座を追加したり、ハッカソン実施や案件ベースでの内製化支援もある(参考リンク)
MaaSのリファレンスアーキテクチャ策定に協力しているMaaS Tech Japan 日高氏は「移動はいろんなものとつながっています」と話す。MaaSを移動サービスの統合だけではなく、実現した先の生活様式の変化や都市全体の効率化も考えている。
MaaSを実現することにより、経路や料金が最適化されるだけではなく、都市交通全体が最適化されることで渋滞緩和やエネルギー効率化にもつながるという。生活者がMaaSアプリを通じてライドシェア(乗り合い自動車)したり、混雑を回避する交通手段を選んだりすれば、渋滞が緩和されるだけではなく、エネルギー消費の効率化にもつながると期待できる。
「MaaSアプリを起点として、都市交通全体にAIを適用することで、都市の最適化が進みます」と日高氏は言う。MaaSがもたらす恩恵は移動の効率化だけではなく、社会や都市全体の最適化にもつながりそうだ。