事業会社のIT部門への問題意識から、現在の組織が生まれた
オープンハウスは1997年9月に設立、2013年9月に東証一部に上場し、居住用不動産の販売および仲介を中心として、グループ全体では総合不動産事業を展開しています。
居住用不動産の場合、土地の購入、建築、販売はそれぞれ異なる会社が担当する場合が多いのですが、オープンハウスでは全てグループ内で完結する製販一体型で事業を展開し、土地の購入から建築、お客様へお引き渡しするまでの期間をより短くし、価格競争力のある戸建て住宅の供給を行っています。
一般論ですが事業会社(主たるビジネスがITサービスではない会社)のIT部門の場合、パートナー企業のITコンサルタントやエンジニア、ツールベンダーの力に頼り、それなりの費用を支払ってシステム導入や運用を依頼するケースが多いと思いますが、私が統括するオープンハウスのIT部門はそれとは異なります。この異なる部分をつまびらかにご紹介することで、様々な事業会社のIT部門の責任者の皆さまが何かしら一歩を踏み出すきっかけに繋がれば幸いです。
オープンハウスでは、必要なシステムやアプリケーションの設計、プログラミング、バージョンアップ、運用までを全て自社内で完結させています。業務で利用するスマートフォン用のアプリ、Webアプリケーションなども、一部のクラウドサービス(AmazonやGoogleなどから提供されているPaaS群)を除けばほぼ自社内で開発し運用しています。外部サービスとのAPI連携なども含めて自社内で開発しています。
加えて各システムの稼働状況は自社で構築した管理システムによる自動監視を用いて、予め設定されたしきい値を監視し、その値を超えれば管理者へアラートが上がる設定にしており、しきい値自体のチューニングを継続して行っていくことで、昨年実績においてはグループシステム全体で稼働率99.999%の可用性を保つことができています。
このようなIT部門を構築した背景には、今日までの事業会社におけるIT部門に対して私自身が感じて来た問題意識がありました。
これまで事業会社のIT部門は、パートナー企業に頼ってシステムが安定稼働していればそれで良いという考えが定着していましたし、この考え方が問題視されることもなかったと思います。しかしながら私はこの責任転嫁できうる多重請負構造こそが事業会社のIT部門、並びにITに関連する企業が皆で平成時代に足踏みをしてしまった大きな失敗ではないかと考えています。
この状況下、日本の事業会社の多くがIT企画力やIT活用力の進化が遅れ、ITに関連する企業の技術力の成長は鈍化を辿り、ひいては国際的な競争力までが失われてしまったように感じています。
平成元年では世界の時価総額ランキングトップ10に日本企業7社がランクインし、トップにNTTが位置していましたが、平成30年になると日本企業はゼロとなり、すっかりGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)をはじめとした海外の新興企業に追いやられてしまったのは皆さまご存知の通りです(参考:ダイヤモンド・オンライン)。