葬儀、仏壇、お墓など終活関連サービスとユーザーをつなぐ鎌倉新書
荻島:葬儀、仏壇、お墓といった伝統的なサービスに対して、IT、Webを使ってサービスを提供している鎌倉新書さんのビジネスにおいて、デジタルトランスフォーメーション(DX)がどのように行われてきたのかについてお話をうかがっていきたいと思います。ここでいうデジタルトランスフォーメーションは、単なるIT化ではなく、データを活用したビジネス、そのビジネスへの変革を指しています。
小林:今の鎌倉新書はそこまでデータ活用ができているわけではないのですが、2019年9月からSaaS型の営業支援ツールを導入し、より長期的に顧客に寄り添った情報を提供するための仕組みを整えているところです。
まず、弊社の主力事業について紹介しますね。鎌倉新書では、葬儀、仏壇、お墓それぞれのポータルサイトを運営しています。各サイトでは、関連する情報を発信しています。そのコンテンツの一つとして葬儀社、仏壇仏具店、石材店、霊園などの情報を掲載しており、サイトや電話でのお問い合わせを通して、一般ユーザーに紹介を行っています。
荻島:ビジネスとしては、ポータルサイトへの情報掲載料になるのでしょうか。
小林:一部広告を除いて情報掲載に費用はかかりません。紹介した事業者で成約した場合に、成約報酬をいただいています。各事業者と一般ユーザーをつなぐB2B2Cのビジネスです。
デジタルトランスフォーメーションという観点から、どうして今のようなビジネスの形になったのか、ということをお話しましょう。弊社は、過去にビジネスを2回大きく変化させていて、現在がまだ第3の変革期にあると考えています。
弊社はもともと、仏教の専門書籍の出版社として1984年に創業しました。しかし、事業がうまくいかず赤字続きでした。そこに、創業者の息子であり現在のCEOである清水が勤めていた証券会社を辞め入社し事業の再建をはかることになりました。
入社してすぐに仏教だけを取り扱うのでは限界があると悟り、仏壇、仏具に広げて、業界向けの情報を届ける出版社になりました。これが1回目の変革です。そして、2000年にこれまで紙媒体で提供していた情報をインターネットで発信していくことになりました。これが2回目の変革です。2回目の変革では、お客様は書籍が欲しいのではなく、情報が欲しいのだと考え、「情報加工業」という視点でビジネスをとらえ直したのです。
葬祭関連のつながりが薄れて求めるようになった紹介サービス
荻島:2000年というとかなり早い段階から、コンテンツをWeb上に公開するようになったのですね。
小林:はい。当初は雑誌の電子版のような形で掲載しており、収益は出版事業から得ていました。情報加工業という視点にたてば、書籍や雑誌は加工形式の一つに過ぎず、Webだけでなくセミナーなどでも情報を提供することにしたのです。
ある時、Webを見た一般の人から問い合わせの電話がありました。良さそうな葬儀社を教えてほしい、というのです。葬儀関連の情報を扱っているのだから、知っているだろうと。お問い合わせに対応しながら、これはビジネスになるなとひらめいたのです。
荻島:葬儀は突然発生するので、つながりがなければどこにお願いしていいかわからないですよね。昔は、地域の葬儀社に代々お願いすることもあったでしょうが。
小林:そうなんです。今は8割以上の方が病院で亡くなります。葬儀社を紹介する病院もありますが、大抵は自分で葬儀社を探すことになります。知りたいのは、そのエリアの事業者、価格、サービス内容ですよね。これに加えて、利用者のレビューがあれば定量的に信頼性を確認できるということで、これらの情報をWebサイト上で提供するようになりました。
葬儀代、お布施がいくらなのかというのは、斎場によって異なりこれまで相場が不透明だったところがありました。しかし、業者の情報をまとめて掲載することで情報の透明性を上げられました。
荻島:インターネットで葬儀社を探すことが普通になっているのですね。
小林:とはいってもまだまだ数は多くありません。日本では年間136万人が亡くなり、そのうち葬儀をするのは130万件。インターネット経由はその7%の10万件、弊社の「いい葬儀」で取り扱っている件数が1万件程度です。まだ、93%はオフラインのつながりで取り扱われており、特に地方では互助会が機能していて冠婚葬祭をカバーしていることが多いです。しかしこれからこの割合も変わってくると思います。