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DX推進の目的化やツール依存症……ブレインパッドが語るAI/データ活用で頻発する症状と処方箋

データ活用プロジェクトが行き詰まる3つの症状と処方箋

 同社には、時に行き詰まったプロジェクトの相談が持ち込まれることもある。近藤氏は、それらの原因を整理し、次の3つの症状を実際にあった案件事例として紹介した。

 まず一つ目は「AI勘違い症」であり、AIツールの導入を目的化してしまうこと。ある会社では、データが蓄積されていない、成型できていないにも関わらず、「AIを使って何かができる」と思い込んでしまっていた。これはデータ活用以前の「分析のプロセス」を最初から理解していないことに起因する。併せて、サポート役となるべく相談先の選定ミスもこの思い込みが是正されなかった状況をつくったと紹介。AIベンチャーはAIのエンジニアリング技術に詳しくともビジネスノウハウには疎い、逆に戦略コンサルファームは、要件定義などの設計は得意とするもののAIの技術選定、データの繊細な取り扱い方法については十分なナレッジを持っていない。すなわち、この類のプロジェクトをリードするためにはビジネス面とAI技術の「両面からサポートが適う座組み」を考えることが必要というわけだ。

 ここで近藤氏は相談先を選ぶ際にまず意識すべきこととして、データ分析の基本である“モデリング以前のプロセス理解”の重要性を強調した。目標設定からデータを準備し、分析設計を行なうまでに、データ分析プロジェクトの内80%の工数がかかるという。

データ分析プロジェクトの工数割合(1) 出典:ブレインパッド作成[画像クリックで拡大表示]

 特に「使えるデータを用意する、仕立てる」ことは存外難しい。提供ポリシーやガイドライン不足、データ抽出が外部ベンダー任せで「使えるデータが手元に届かない」、過去データの紛失やシステムの特殊運用によるデータの属人化、コードの使いまわし等による問題などの「データが読み解けない」ことが、「データ分析以前のボトルネック」になるという。


データ分析プロジェクトの工数割合(2) 出典:ブレインパッド作成[画像クリックで拡大表示]

 この処方箋として、近藤氏は「経営主導での『データガバナンス』推進」の重要性を強調する。データを第四の経営資源と捉え、法規制に対応しつつデータを「使い倒せる」状態へと導くには、各部門任せの運用ではなく、経営陣が先頭に立ち推進していくことが必ず求められるためだ。分析ができなくなるデータの「捨てない」「つなぐ」「隠さない」を避けるためのルールの厳守が不可欠となる。

 そして二つ目の症状として「PoC貧乏症」があげられた。ある会社ではPoCを2社に依頼しその結果を受領したものの、その先どうすればよいか選べなくなったという事例だ。曖昧な依頼内容が原因で、それぞれ精度検証の条件や使用したアルゴリズムが異なり、2社の比較ができない状況を引き起こしていた。最終的に業者選定を「業務理解が深い」として決定したが、ここでは「PoCのアルゴリズムの実用性検証」であるべきだったという。近藤氏は、この処方箋として「そもそも、『データ分析によってどれだけ利益が向上するのか』というビジネス面からの問いが必要だったのではないか」と指摘した。

 三つ目の症状に「ツール依存症」があげられた。これは目的や活用実現性を考えずに流行り先行で導入したツールの効果が出ないことから、他社へのリプレイスばかり考えてしまうこと。たとえば、CDP(Customer Data Platform)で蓄積しつつもデータの有用性を検証しないまま「このデータは使えない」と判断したり、何をもって「効果があった」とするのか曖昧な状態でMAツールそのものを「使えない」と判断したり、ツール導入が目的となってしまうケースが散見される。顧客行動データの収集・蓄積、分析を用いた施策設計、オンラインチャネル接客の「3プロセス」は一体的に考えていくべきだが、マーケターの意識は「オンラインでどんな接客をするか=How(策)」ばかりに目が行き、マーケター本来の「サービス提供目的」や「ターゲット選定」などの「マーケティングそのもの」の再考を見失いがちだという。そして、次から次へと新しいSaaSツールが台頭し、「これができます、あれができます」というベンダーの魅力的なトークも、「ツール依存症」を生み出す一因という。

 近藤氏は、「マーケティングの“三つの基礎“のうち、セグメンテーションにはデジタルの力が発揮されるようになった。しかし、ターゲティング、ポジショニングについては、サービス自体の変遷や消費者行動の変化に沿って考え続け、試行錯誤を続けるほかない」と語る。コミュニケーション、配信手段としてのMAは機能的にはどこも既に充実しているため、それよりもむしろ顧客理解のためのデータ活用を考えるべきというわけだ。

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デジタル施策でリアル価値を追求、なぜ取り組むかを明確に

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この記事の著者

伊藤真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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