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「3DEXPERIENCE World 2020」イベントリポート ダッソーが製造業向けアプリを“サブスク”で提供する理由

edited by Operation Online   2020/02/13 06:00

情報共有基盤で作業効率を大幅にアップ

 2月10日の基調講演でバッシ氏は、「3DEXPERIENCE」の優位性を強調するとともに、クラウド型技術情報共有フレームワーク「3DEXPERIENCE WORKS」の新オファリングを発表した。

 「3DEXPERIENCE」とは、ダッソーの製造業向け開発プラットフォーム戦略だ。技術情報共有基盤の「3DEXPERIENCEプラットフォーム」を基軸に、デザイン、設計、シミュレーション、製造、管理といった、製造工程とその情報をシームレスに連携させる。

ダッソーでは2011年から「3DEXPERIENCE」を打ち出している

ダッソーでは2011年から「3DEXPERIENCE」を打ち出している

 同プラットフォームには、コラボレーションツールやスケジュール管理、自動ソフトウェアアップデートといった機能が包含されている。プラットフォーム上で稼働するアプリケーションとそのデータは、すべてクラウド上で一元管理される。これによりユーザーは、いつでも、どこからも、どのデバイスからでも必要な情報にアクセスできるようになる。

 ダッソーは「3DEXPERIENCEプラットフォームを利用することで、顧客との情報共有によるコラボレーションや製品・サービスの改善、製造ERP(Enterprise Resources Planning)との連携による生産の最適化などが図れる」としている。

 3DEXPERIENCE WORKSは、3DEXPERIENCEプラットフォームを基盤に、ダッソーが擁する高度な製造ソリューションの機能を「一口サイズのアプリケーション」(バッシ氏)にして提供するフレームワークだ。具体的には、製造工程ソリューションの「DELMIA」、シミュレーションの「SIMULIA」、製品ライフサイクル管理の「ENOVIA」といったソリューションが擁する機能を、さらに細分化して提供する。

「3DEXPERIENCE WORKS」オファリング。デスクトップ版のSOLIDWORKSユーザーや新規ユーザーに対し、新たな選択肢と価値を提供する。それぞれのオファリングは、クラウドで提供されるSOLIDWORKS(3DEXPERIENCE SOLIDWORKS)の搭載機能に応じて「Standard」「Professional」「Premium」の3種類に大別される。

「3DEXPERIENCE WORKS」オファリング。デスクトップ版のSOLIDWORKSユーザーや新規ユーザーに対し、新たな選択肢と価値を提供する。それぞれのオファリングは、クラウドで提供されるSOLIDWORKS(3DEXPERIENCE SOLIDWORKS)の搭載機能に応じて「Standard」「Professional」「Premium」の3種類に大別される。

 これらのアプリケーション(機能)は、特定業務に分類した「ロール(役割)」と名付けられたスタックとして提供される。たとえば、マシンエンジニア向けのロールには「3D Master Designer」「Function Driven Gen Designer」「Mechanical Designer」「Mechanism Simulation Designer」などがある。それぞれのロールの中に、各アプリケーション(機能)が包含されるイメージだ。なお、課金はロール単位だという。

モバイルデバイスからでも高度な設計アプリを操作できる。画面下側に表示されているのが「ロール」群だ

モバイルデバイスからでも高度な設計アプリを操作できる。画面下側に表示されているのが「ロール」群だ

 これまで、こうしたハイエンドのアプリケーションは、高性能コンピュータでなければ利用できなかった。しかし、3DEXPERIENCE WORKSで利用できるアプリケーションはクラウドベースであるため、ローカルコンピュータの性能に左右されることなく利用できる。

 バッシ氏は、「3DEXPERIENCEプラットフォームは、必要なロール(アプリケーション群)にアクセスしたり、プロジェクトをシミュレートしたり、共同作業をしたりできるプラットフォームだ。ユーザーはリアルタイムで設計データを共有・変更し、(次のプロセスとなる)シミュレーション作業に進むことができる。3DEXPERIENCE WORKSを活用すれば、プロセス間のギャップが解消されて継続的な作業ループが可能になる」と、そのメリットを強調する。

 現在は、同じCADソフトでも、バージョンが異なると上位互換性が失われてデータが共有できない。また、CADソフトで作成したデータをシミュレーションソフトで利用するためには、データをインポート・エクスポートする作業が発生していた。さらに、ソフトのバージョン管理や修正プログラムの更新作業など発生している。しかし、3DEXPERIENCE WORKSを利用すれば、こうした作業から解放されるというわけだ。

ロールの性質によって包含されているアプリの数は異なる。例えば「3D Creator」ロールには設計アプリの「xDesign」、「3D Sculptor」ロールにはモデリングアプリの「xShape」が入ってるだけだが、「Structural Mechanics Engineer」ロールには9つのアプリが包含されている

ロールの性質によって包含されているアプリの数は異なる。例えば「3D Creator」ロールには設計アプリの「xDesign」、「3D Sculptor」ロールにはモデリングアプリの「xShape」が入ってるだけだが、「Structural Mechanics Engineer」ロールには9つのアプリが包含されている

コストメリットを考えたらサブスクがよい

 もう1つ、バッシ氏が「3DEXPERIENCE WORKSの圧倒的優位性」と強調するのは、コストである。

 前述のとおり、3DEXPERIENCE WORKSはサブスクリプション(定額制サービス)モデルで提供される。バッシ氏は「3DEXPERIENCE WORKSはユーザーが作業内容に応じて必要なアプリケーションだけを選択して利用できる」と説明する。

 同氏は3DEXPERIENCE WORKSのサブスクリプションモデルを「アドビ モデル」だと説明する。

 「Photoshop」や「Illustrator」、「InDesign」といったクリエイティブソリューションを提供する米アドビは、これらのソリューションを「Adobe Creative Cloud」としてサブスクリプションで提供している。2011年に、売り切り型からサブスクリプション型に舵を切ったことで一時的に売り上げは落ち込んだものの、2019年度の収益は前年比24%増と過去最高を記録した。

 ユーザーニーズを満たし技術の進化に柔軟に対応するためには、継続的に機能を追加する必要がある。そのためには、安定した収益性を確保するという意味においても、サブスクリプションのほうがよいとの判断だ。

 バッシ氏は「同様の機能を比較した場合、3DEXPERIENCE WORKSのほうが顧客とって割安だ。既存のユーザーが(3DEXPERIENCE WORKSへのシフトで)コスト高になることはない」と断言している。



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著者プロフィール

  • 鈴木恭子(スズキキョウコ)

    ITジャーナリスト。 週刊誌記者などを経て、2001年IDGジャパンに入社しWindows Server World、Computerworldを担当。2013年6月にITジャーナリストとして独立した。主な専門分野はIoTとセキュリティ。当面の目標はOWSイベントで泳ぐこと。

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